「退職したいけど、プロジェクトが途中で言い出せない」「上司に引き留められて辞められない」「客先に迷惑をかけると思うと言い出せない」
エンジニアの退職は、一般的な職種以上に難しいのが現実です。プロジェクトの途中、技術的な引き継ぎの複雑さ、SES企業特有の引き留め——様々な理由で、退職を言い出せずに悩むエンジニアが急増しています。
マイナビの調査によると、2023年から2024年にかけて退職代行を利用したクリエイター・エンジニア職は18.8%に達し、IT・通信・インターネット業界では29.8%の企業で退職代行による退職者が発生しています。もはや退職代行は、エンジニアにとって珍しい選択肢ではありません。
本記事では、異業種からエンジニア転職を経験した筆者が、エンジニアの退職代行利用について徹底解説します。なぜエンジニアが退職代行を使うのか、どのサービスを選ぶべきか、実際の利用手順まで、あなたの円満退職を実現するための全知識をお届けします。
エンジニアが退職代行を使う理由
IT業界での退職代行利用の増加
退職代行サービス「モームリ」の調査によると、IT業界における退職代行利用者の7〜8割がSES企業に属するエンジニアです。なぜこれほどまでに、エンジニア、特にSESエンジニアが退職代行を利用するのでしょうか。
株式会社マイナビの調査では、退職代行を利用した人の割合は16.6%に達し、その中でもクリエイター・エンジニア職は18.8%と特に高い数字を記録しています。一般的な退職と比べて、エンジニアの退職には特有の困難があるのです。
プロジェクト途中で辞めにくい
エンジニアの退職が難しい最大の理由は、プロジェクトベースで働いていることです。
プロジェクトの途中で抜けられない圧力 「あと1ヶ月でリリースだから」「この機能が完成するまで待ってくれ」と引き留められ、退職時期を先延ばしにされ続けるケースは非常に多いです。
真面目なエンジニアほど、「プロジェクトを途中で放り出すのは無責任だ」と感じ、自分を犠牲にしてでも続けてしまいます。
次のプロジェクトへの巻き込み 現在のプロジェクトが終わっても、「次のプロジェクトが決まっているから」「引き継ぎできる人がいないから」と、さらに引き留められることもあります。
結局、いつまで経っても辞められない状況に陥ります。
リリース前の繁忙期 リリース直前の繁忙期は、最も人手が必要な時期です。この時期に退職を申し出ると、強い非難を浴びせられることもあり、言い出せなくなります。
SES特有の複雑な退職事情
SES企業にとってエンジニアは利益を生み出す源です。したがって、辞められると売上が減るため、退職希望者に対して強く引き留める傾向があります。
三者間の複雑な関係 SES(客先常駐)では、自社、常駐先、元請けという三者間の契約関係があります。退職するには、この三者すべてに調整が必要で、手続きが複雑化します。
契約期間の縛り 客先との契約があるため、「契約期間が終わるまで辞められない」と言われることがあります。法律上は問題ありませんが、会社側が契約を理由に引き留めるケースは多いです。
自社と客先、両方への報告 退職を伝える相手が、自社の上司だけでなく、常駐先の責任者にも及ぶ場合があります。複数の人に退職を伝える精神的負担は大きいです。
営業担当との板挟み SES企業の営業担当は、エンジニアを客先に配置することで売上を作っています。エンジニアが辞めると営業成績に直結するため、強い引き留めに遭うことがあります。
引き継ぎの複雑さ
エンジニアの業務は専門性が高く、引き継ぎに時間がかかります。
技術的な引き継ぎ コードベース、システムアーキテクチャ、過去の設計判断、既知のバグや技術的負債——これらをすべて後任者に伝えるには、相当な時間と労力が必要です。
ドキュメントの不足 多くの現場では、ドキュメントが十分に整備されておらず、退職時に慌てて作成することになります。これが退職を引き延ばす理由になることもあります。
後任者がいない 特に中小企業やスタートアップでは、後任者がすぐに見つからないこともあります。「引き継ぐ人がいないから辞められない」という状況に陥ります。
人間関係のストレス
退職を言い出すこと自体が、大きな精神的ストレスです。
パワハラ・モラハラ 上司からのパワハラやモラハラがある職場では、退職を言い出すこと自体が恐怖です。怒鳴られたり、嫌味を言われたりすることを恐れ、言い出せません。
チームへの罪悪感 仲の良いチームメンバーに迷惑をかけると思うと、言い出しにくくなります。特に、少人数のチームでは、一人抜けることの影響が大きいです。
リモートワークでのコミュニケーション困難 リモートワークが主流になり、対面で話す機会が減りました。Slackやメールで退職を切り出すのは難しく、かといってわざわざ出社して伝えるのもハードルが高いです。
精神的・身体的な限界
すでに精神的・身体的に追い詰められている場合、自分で退職を伝える余裕がありません。
うつ状態 長時間労働や過度のストレスで、うつ状態になっているエンジニアは少なくありません。この状態では、退職交渉をする気力がありません。
バーンアウト 燃え尽き症候群(バーンアウト)に陥り、何もする気力がない状態では、退職手続きすら重荷です。
体調不良 過労で体を壊してしまった場合、出社すること自体が困難です。この状態で退職交渉をするのは無理があります。
こうした状況にある方こそ、退職代行を利用すべきです。自分の健康を最優先にしてください。
退職代行サービスとは
退職代行の基本的な仕組み
退職代行サービスとは、労働者に代わって、専門の業者や弁護士が会社に退職の意思を伝え、退職手続きを進めてくれるサービスです。
サービスの流れ
- 利用者が退職代行業者に依頼
- 業者が会社に退職の意思を伝達
- 退職に必要な手続きを代行
- 退職完了
利用者は、会社の人と一切話すことなく、退職できます。
対応範囲
- 退職の意思表示
- 退職日の調整
- 有給休暇の消化申請
- 退職書類の受け取り
- 私物・貸与品の返却調整
業者のタイプによって、対応できる範囲が異なります。
退職代行の3つのタイプ
退職代行サービスは、運営主体によって3つのタイプに分類されます。それぞれメリット・デメリットがあります。
1. 弁護士が運営する退職代行
特徴 弁護士法に基づき、会社との交渉や法的トラブルへの対応が可能です。最も法的リスクが低く、安心して利用できます。
できること
- 退職の意思表示
- 有給休暇や未払い残業代の交渉
- 退職金や損害賠償請求への対応
- パワハラ・セクハラの相談
- 訴訟対応
料金相場 5万円〜7万円程度
メリット
- 法的トラブルにも対応可能
- 会社との交渉ができる
- 万が一訴訟になっても安心
デメリット
- 料金が高い
- 対応がやや堅い場合も
向いている人
- 会社とトラブルになりそうな人
- 未払い賃金がある人
- パワハラなどの被害がある人
2. 労働組合が運営する退職代行
特徴 労働組合法に基づき、団体交渉権を持ちます。会社との交渉が可能で、弁護士よりも料金が安いのが魅力です。
できること
- 退職の意思表示
- 有給休暇の交渉
- 退職日の交渉
- 退職条件の交渉(一部)
料金相場 2万5千円〜3万円程度
メリット
- 弁護士より安い
- 会社との交渉ができる
- 法的根拠がある
デメリット
- 訴訟対応はできない
- 複雑な法律相談には限界がある
向いている人
- 円満に退職したい人
- コストを抑えたい人
- 基本的な交渉だけで済む人
3. 一般企業が運営する退職代行
特徴 民間企業が運営するサービスです。料金が最も安いですが、法律上できることが限られます。
できること
- 退職の意思を「伝える」のみ
- 会社からの連絡の取次ぎ
できないこと
- 会社との交渉(非弁行為に該当)
- 有給休暇や退職日の交渉
- 法的トラブルへの対応
料金相場 1万5千円〜2万5千円程度
メリット
- 料金が安い
- 対応が早い
- 気軽に利用できる
デメリット
- 交渉ができない
- 法的根拠が弱い
- 会社が拒否する可能性がある
向いている人
- 会社が円満に対応してくれそうな人
- とにかく安く済ませたい人
- 交渉事項がない人
どのタイプを選ぶべきか
自分の状況に応じて、適切なタイプを選びましょう。
弁護士型を選ぶべき人
- 会社とトラブルになっている
- 未払い残業代や有給買取を請求したい
- パワハラ・セクハラの被害がある
- 損害賠償を請求されそう
- 訴訟リスクがある
労働組合型を選ぶべき人
- 一般的な退職を希望している
- 有給消化や退職日の調整をしたい
- コストを抑えつつ、安心感も欲しい
- SESなど複雑な雇用形態
一般企業型を選ぶべき人
- 会社が比較的良心的
- 交渉事項が特にない
- とにかく安く済ませたい
- 自分で退職を伝える勇気がないだけ
エンジニアにおすすめなのは?
エンジニア、特にSESの場合は、労働組合型がおすすめです。理由は以下の通りです:
- 客先との契約があるため、退職日の交渉が必要なことが多い
- 有給休暇の消化を認めてもらえないケースがある
- 弁護士より安く、一般企業型より安心
ただし、パワハラや未払い賃金がある場合は、弁護士型を選びましょう。
おすすめの退職代行サービス
【労働組合型】退職代行SARABA
運営 労働組合「退職代行SARABAユニオン」
料金 24,000円(税込)
特徴 業界で最も実績のある労働組合型退職代行です。累計利用者数は数万人を超え、成功率はほぼ100%です。
できること
- 退職の意思表示
- 有給休暇の交渉
- 退職日の調整
- 未払い賃金の請求(一部)
メリット
- 労働組合運営で法的根拠がある
- 24時間365日対応
- LINEで気軽に相談できる
- 即日退職可能
- 返金保証あり
こんな人におすすめ
- コスパ重視の人
- 実績のあるサービスを使いたい人
- 有給消化や退職日の交渉をしたい人
【労働組合型】退職代行ガーディアン
運営 東京労働経済組合
料金 24,800円(税込)
特徴 東京都労働委員会認証の正式な労働組合が運営しています。法適合の労働組合なので、安心して利用できます。
できること
- 退職の意思表示
- 団体交渉
- 退職後のトラブル相談(無制限)
メリット
- 退職完了後も無制限で相談可能
- 即日退職対応
- 追加料金一切なし
- トラブル対応に強い
こんな人におすすめ
- 退職後のトラブルが心配な人
- アフターフォローを重視する人
- 労働組合の安心感が欲しい人
【弁護士型】弁護士法人みやび
運営 弁護士法人みやび
料金 55,000円(税込)+回収額の20%(オプション)
特徴 退職代行専門の弁護士法人です。弁護士が直接対応するため、法的トラブルにも強いです。
できること
- 退職の意思表示
- あらゆる交渉
- 未払い残業代の請求
- 損害賠償請求への対応
- パワハラ・セクハラの相談
- 訴訟対応
メリット
- 弁護士が直接対応
- 法的トラブルに完全対応
- 未払い賃金の回収も可能
- 訴訟リスクがあっても安心
デメリット
- 料金が高い
- 回収額に応じた成功報酬が発生
こんな人におすすめ
- 会社とトラブルになっている人
- 未払い残業代を請求したい人
- 損害賠償を請求されそうな人
- パワハラ・セクハラの被害がある人
【一般企業型】退職代行モームリ
運営 株式会社アルバトロス
料金 22,000円(税込)
特徴 たった3年間で利用者数は約3万人に達し、IT業界の利用者が多いことで知られています。業界最安級の料金設定が魅力です。
できること
- 退職の意思を伝える
- 会社からの連絡の取次ぎ
- 転職サポート
メリット
- 業界最安級の料金
- 転職サポートが無料
- IT業界の実績が豊富
- 対応が早い
デメリット
- 交渉はできない
- 会社が拒否する可能性もある
こんな人におすすめ
- とにかく安く済ませたい人
- 会社が比較的良心的な人
- 転職も同時に考えている人
【労働組合型】退職代行Jobs
運営 株式会社アレス(労働組合と提携)
料金 27,000円(税込)+労働組合費2,000円
特徴 顧問弁護士の指導を受けた適正業務を行っています。労働組合と提携しているため、交渉も可能です。
できること
- 退職の意思表示
- 有給休暇の交渉
- 退職日の調整
- 引き継ぎの調整
メリット
- 顧問弁護士の指導あり
- 労働組合との提携で交渉可能
- 転職サポートあり
- 安心の実績
こんな人におすすめ
- 弁護士の指導を受けたサービスが良い人
- 交渉もしたい人
- 転職も考えている人
退職代行の利用手順
申し込みから退職完了までの流れ
退職代行の利用は、思ったよりも簡単です。以下のステップで進みます。
ステップ1: 無料相談(即日〜)
まずは、退職代行サービスに相談します。多くのサービスが、LINE、メール、電話で無料相談を受け付けています。
相談時に伝えること
- 現在の状況(どんな会社で、どんな理由で辞めたいか)
- 希望する退職日
- 有給休暇の残日数
- 特別な事情(未払い賃金、パワハラなど)
- SESの場合は、客先常駐の有無
相談は匿名でも可能です。まずは気軽に問い合わせてみましょう。
ステップ2: 正式申し込みと支払い(即日)
サービス内容と料金に納得したら、正式に申し込みます。
支払い方法
- クレジットカード
- 銀行振込
- コンビニ決済
- 後払い(一部サービス)
多くのサービスが、クレジットカード決済に対応しており、即日対応が可能です。
ステップ3: 詳細ヒアリング(即日)
担当者から、退職に関する詳細なヒアリングがあります。
聞かれること
- 会社名、所属部署
- 上司の名前と連絡先
- 退職理由(会社に伝える内容)
- 希望退職日
- 有給休暇の消化希望
- 返却物と受け取る書類
- 会社への伝言事項
このヒアリング内容をもとに、業者が会社に連絡します。
ステップ4: 退職の意思表示(翌日〜)
業者が、あなたに代わって会社に退職の意思を伝えます。
連絡方法
- 電話
- 内容証明郵便
- 両方
通常、業者が朝一番に会社に電話し、退職の意思を伝えます。あなたは、この日から出社する必要はありません。
ステップ5: 会社とのやり取り(数日〜1週間)
業者が、会社との間で退職条件を調整します。
調整内容
- 退職日の確定
- 有給休暇の消化
- 退職書類の郵送手続き
- 私物・貸与品の返却方法
- 引き継ぎの方法
労働組合型や弁護士型であれば、有給消化や退職日について交渉してくれます。
ステップ6: 必要書類の郵送(自分で対応)
会社への返却物と、退職届などの必要書類を郵送します。
返却するもの
- 社員証
- PC、スマートフォン
- 入館証、鍵
- 制服(ある場合)
- 名刺
- 書類、USBメモリなど
受け取るもの
- 離職票
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳(会社保管の場合)
- 源泉徴収票
郵送方法は、業者が指示してくれます。通常、宅配便や内容証明郵便を使います。
ステップ7: 退職完了(2週間〜1ヶ月)
会社から退職書類が届き、退職が正式に完了します。
民法上、退職の意思表示から2週間で退職が成立します。ただし、有給消化や引き継ぎの関係で、実際には1ヶ月程度かかることもあります。
事前に準備すべきこと
退職代行をスムーズに進めるため、事前に準備しておくべきことがあります。
1. 会社情報の整理
- 会社名、住所、電話番号
- 上司の名前と連絡先
- 人事部の連絡先
- 自分の社員番号
これらの情報は、業者が会社に連絡する際に必要です。
2. 有給休暇の残日数確認
有給休暇が何日残っているか、事前に確認しておきましょう。給与明細や勤怠システムで確認できます。
有給が残っている場合、消化してから退職できる可能性があります。
3. 未払い賃金の確認
残業代や休日出勤手当が未払いになっていないか、確認しましょう。
未払い賃金がある場合は、弁護士型の退職代行を利用し、請求することをおすすめします。
4. 返却物のリストアップ
会社から借りているものをリストアップします。
- PC、タブレット、スマートフォン
- 社員証、入館証
- 制服、名刺
- 書類、USBメモリ
- その他備品
返却漏れがあると、後でトラブルになる可能性があります。
5. 私物の持ち帰り
ロッカーやデスクに私物がある場合、事前に持ち帰っておきましょう。
退職代行を使うと、出社せずに退職するため、後から私物を取りに行くのは気まずいです。
6. データのバックアップ
会社のPCに私的なデータがある場合、事前にバックアップを取っておきましょう。
ただし、会社の機密情報や顧客情報を持ち出すのは厳禁です。
7. 転職活動の準備
退職後の転職活動に備え、履歴書や職務経歴書を準備しておきましょう。
退職代行サービスの中には、転職サポートを提供しているところもあります。
退職代行を使う際の注意点
退職代行はメリットも大きいですが、注意すべき点もあります。
会社との関係は完全に断たれる
退職代行を使うと、会社との関係は修復不可能になります。将来、その会社に戻ることはできないと考えてください。
同業他社への転職で不利になる可能性
IT業界は狭い世界です。退職代行を使ったことが、同業他社に知られる可能性もゼロではありません。
ただし、これを理由に不採用にすることは違法なので、過度に心配する必要はありません。
損害賠償請求のリスク(ごく稀)
会社から損害賠償を請求されるリスクは、ごく稀ですが存在します。
ただし、実際に訴訟に発展するケースはほとんどありません。また、単に退職しただけで損害賠償が認められることはまずありません。
心配な場合は、弁護士型の退職代行を利用しましょう。
引き継ぎが不十分になる
退職代行を使うと、十分な引き継ぎができない可能性があります。
可能であれば、事前に簡単な引き継ぎ資料を作成しておくと、良心の呵責も少なくなります。
退職代行業者の質
退職代行業者の中には、適切な対応ができない悪質な業者も存在します。
実績があり、口コミ評価の高い業者を選びましょう。
エンジニア特有の退職時の問題と対処法
プロジェクト途中の退職
「プロジェクトが途中だから辞められない」という思い込みがありますが、法律上は問題ありません。
法律上の権利
民法第627条により、雇用期間の定めがない場合、退職の意思表示から2週間で退職できます。プロジェクトの都合は関係ありません。
会社が「プロジェクトが終わるまで待ってくれ」と言っても、法律上は応じる義務はありません。
現実的な対応
とはいえ、プロジェクトの途中で抜けることへの罪悪感は残ります。以下のように対応しましょう:
- 可能であれば、区切りの良いタイミングを選ぶ
- 簡単な引き継ぎ資料を作成しておく
- 業者を通じて、引き継ぎ方法を提案する
ただし、自分の健康を最優先にしてください。プロジェクトよりも、あなたの人生の方が大切です。
技術的な引き継ぎ
エンジニアの業務は専門性が高く、引き継ぎが複雑です。
引き継ぎ資料の作成
可能であれば、以下の内容を含む簡単な引き継ぎ資料を作成しておきましょう:
- 担当しているシステムの概要
- コードベースの場所(Gitリポジトリなど)
- よく使うコマンドやツール
- 既知のバグや技術的負債
- 連絡すべき関係者のリスト
- 開発環境のセットアップ手順
完璧である必要はありません。最低限の情報があれば、後任者は何とかなります。
リモートでの引き継ぎ
退職代行を使った場合でも、会社から「リモートで引き継ぎだけしてほしい」と要請されることがあります。
これに応じるかどうかは、あなたの自由です。業者を通じて、条件(時間、報酬など)を交渉することもできます。
引き継ぎができなくても大丈夫
最悪、引き継ぎができなくても、会社は何とかします。それが会社の責任です。
自分を責めすぎないでください。
SES契約の解除
SES企業の場合、客先との契約があるため、退職が複雑に感じられます。
契約期間の問題
「客先との契約が○月まであるから、それまで辞められない」と言われることがあります。
しかし、労働者の退職権は民法で保障されており、客先との契約は関係ありません。会社と客先の契約は、会社の責任で解決すべき問題です。
損害賠償のリスク
「客先に迷惑がかかったから、損害賠償を請求する」と脅されることもあります。
しかし、単に退職しただけで損害賠償が認められることは、ほぼありません。仮に訴訟になっても、勝訴の可能性は極めて低いです。
弁護士型の退職代行を使えば、このような脅しにも対応してもらえます。
客先への報告
退職の報告は、本来は会社が客先に行うべきです。あなたが直接客先に報告する義務はありません。
業者を通じて、「客先への報告は会社側で行うよう」伝えてもらいましょう。
機密情報とデータの取り扱い
エンジニアは、機密情報を扱うことが多いため、退職時の取り扱いに注意が必要です。
会社のコードやデータ
会社のコード、顧客データ、技術文書などは、絶対に持ち出してはいけません。これは法律違反(不正競争防止法、営業秘密侵害)になります。
PCやUSBメモリに会社のデータが残っていないか、確認してから返却しましょう。
GitHubなどのアカウント
会社のGitHubアカウント、Slackワークスペース、AWSコンソールなどへのアクセス権は、退職時に削除されます。
個人的にクローンしたリポジトリがある場合は、削除してください。
競業避止義務
退職後、一定期間は競合他社に転職できないという「競業避止義務」が契約書に含まれていることがあります。
しかし、この条項は、合理的な範囲でしか有効ではありません。過度に広範な制限は、無効とされる可能性が高いです。
心配な場合は、弁護士型の退職代行で相談しましょう。
貸与PCやスマホの返却
会社から貸与されているPC、スマホ、タブレットなどは、速やかに返却する必要があります。
データの削除
返却前に、個人的なデータは削除しておきましょう。
- ブラウザの履歴、パスワード
- 個人的なファイル
- 個人のメールアカウント
ただし、会社のデータは削除してはいけません。
返却方法
業者の指示に従って、宅配便で返却します。
梱包は丁寧に行い、配送記録が残る方法(追跡番号付き)で送りましょう。返却の証拠を残すことが重要です。
返却が遅れると?
返却が遅れると、会社から督促が来ます。最悪の場合、給与から相当額を差し引かれたり、窃盗罪で訴えられるリスクもあります。
速やかに返却してください。
退職代行を使った後の手続き
失業保険の手続き
退職後、次の仕事が決まっていない場合は、失業保険(雇用保険)の手続きを行いましょう。
必要な書類
- 離職票(会社から郵送される)
- 雇用保険被保険者証
- マイナンバーカード
- 本人確認書類
- 通帳
- 証明写真
離職票は、退職後10日以内に会社から送られてきます。届かない場合は、業者を通じて催促しましょう。
ハローワークでの手続き
離職票が届いたら、住所地のハローワークに行き、求職の申し込みをします。
その後、7日間の待機期間を経て、失業保険の給付が始まります。
自己都合退職の給付制限
自己都合で退職した場合、2ヶ月(令和2年10月以降は2ヶ月または3ヶ月)の給付制限期間があります。この間は、失業保険が支給されません。
ただし、パワハラや長時間労働など、「正当な理由」がある場合は、給付制限がなくなります。
退職代行を使った理由を正直に説明すれば、正当な理由と認められる可能性があります。
健康保険の切り替え
退職すると、会社の健康保険から脱退します。次の健康保険に加入する必要があります。
選択肢は3つ
- 国民健康保険に加入
- 任意継続(会社の健康保険を継続)
- 家族の扶養に入る
国民健康保険
住所地の市区町村役場で手続きします。退職から14日以内に手続きが必要です。
保険料は、前年の所得によって決まります。収入が高かった場合、かなり高額になることもあります。
任意継続
退職した会社の健康保険を、最大2年間継続できます。
退職から20日以内に手続きが必要です。保険料は、在職中の約2倍(会社負担分も自己負担)になります。
家族の扶養
配偶者や親の健康保険の扶養に入れる場合もあります。年収130万円未満などの条件があります。
保険料は不要なので、最もお得です。
年金の切り替え
会社員は厚生年金に加入していますが、退職すると国民年金に切り替わります。
手続き
住所地の市区町村役場で、退職から14日以内に手続きします。
国民年金の保険料は、月額16,980円(2025年度)です。収入にかかわらず、定額です。
免除・猶予制度
収入が少ない場合、保険料の免除や猶予を申請できます。失業した場合は、特例として免除が認められやすくなります。
未納のまま放置すると、将来の年金額が減ります。必ず手続きをしましょう。
住民税の支払い
住民税は、前年の所得に対して課税されます。退職しても、支払い義務は残ります。
給与天引きの停止
在職中は、住民税が給与から天引き(特別徴収)されていましたが、退職すると停止します。
納付書での支払い
退職後は、市区町村から納付書が届きます。自分で支払う(普通徴収)必要があります。
支払い方法は、銀行振込、コンビニ払い、口座振替などがあります。
一括徴収
1月〜5月に退職した場合、残りの住民税が最後の給与から一括で引かれます。
金額が大きくなるため、最後の給与が少なくなります。
転職活動の開始
退職後は、速やかに転職活動を始めましょう。
転職エージェントの活用
エンジニアの転職では、転職エージェントの活用が効果的です。
- レバテックキャリア(IT特化)
- マイナビIT AGENT(IT特化)
- ワークポート(未経験にも強い)
- リクルートエージェント(総合)
- doda(総合)
複数のエージェントに登録し、幅広く求人情報を得ましょう。
退職代行を使ったことを伝えるべきか?
面接で「前職の退職理由は?」と聞かれることがあります。
退職代行を使ったことは、必ずしも伝える必要はありません。
「前職の労働環境が合わず、退職しました」という説明で十分です。
ただし、嘘をつくのはNGです。聞かれたら正直に答え、「前向きに次のキャリアに挑戦したい」という姿勢を示しましょう。
退職代行を使わない方が良いケース
退職代行は便利ですが、すべてのケースで使うべきというわけではありません。
円満に辞められそうな場合
会社の人間関係が良好で、上司も理解がある場合は、自分で退職を伝えた方が良いです。
円満退職のメリット
- 前職との良好な関係が続く
- 将来的に出戻り転職の可能性が残る
- 同業他社での評判を守れる
- 紹介や人脈が生きる
退職代行を使うと、これらのメリットは失われます。
次の転職先が決まっている場合
すでに次の転職先が決まっている場合、退職交渉もスムーズに進むことが多いです。
「○月に転職先に入社する予定なので、その前に退職したい」と明確に伝えられるため、引き留めにも遭いにくいです。
引き継ぎを丁寧にしたい場合
後任者やチームメンバーに迷惑をかけたくない場合、自分で丁寧に引き継ぎをした方が良いです。
技術的な引き継ぎは、対面やオンラインで説明した方が、はるかに効率的です。
経験を積みたい若手エンジニア
20代の若手エンジニアで、まだ経験が浅い場合、「退職交渉」自体も一つの経験です。
今後のキャリアで、何度も転職する可能性があります。その度に退職代行を使うのは現実的ではありません。
一度、自分で退職交渉を経験しておくことも、成長につながります。
会社と戦いたい場合
パワハラやセクハラで会社と戦いたい、未払い賃金をしっかり回収したい、という場合は、弁護士に直接依頼した方が良いケースもあります。
退職代行はあくまで「退職」が目的なので、会社への追及や損害賠償請求は限定的です。
本格的に戦う覚悟がある場合は、労働問題専門の弁護士に相談しましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1: 本当に会社の人と話さずに辞められますか?
A: はい、辞められます。
退職代行業者が、あなたに代わって会社と連絡を取ります。会社からあなたに直接連絡が来ても、応答する義務はありません。
業者から「会社からの連絡には応じないように」と指示されます。万が一、しつこく連絡が来る場合は、業者に報告しましょう。
Q2: 即日退職できますか?
A: 状況によります。
法律上は、退職の意思表示から2週間で退職が成立します。
ただし、有給休暇が残っている場合、即日から有給消化に入り、2週間後に退職という形を取れます。実質的に「即日退職」になります。
有給がない場合は、2週間は欠勤扱いになります。この期間の給与は出ませんが、会社に行く必要もありません。
Q3: 損害賠償を請求されることはありますか?
A: 実際に請求されることは、ごく稀です。
会社が「損害賠償を請求する」と脅してくることはありますが、実際に訴訟まで発展するケースはほとんどありません。
また、単に退職しただけでは、損害賠償が認められることはまずありません。
心配な場合は、弁護士型の退職代行を利用しましょう。
Q4: 退職金はもらえますか?
A: もらえます。
退職代行を使ったからといって、退職金がもらえなくなることはありません。退職金は、労働の対価として支払われるものだからです。
もし会社が「退職代行を使ったから退職金は払わない」と言ってきたら、これは違法です。業者を通じて請求しましょう。
Q5: 有給休暇は消化できますか?
A: 労働組合型または弁護士型なら、交渉可能です。
有給休暇の消化は、労働者の権利です。会社は原則として拒否できません。
労働組合型や弁護士型の退職代行であれば、有給消化を交渉してくれます。
一般企業型の場合、交渉はできませんが、自分から「有給を消化したい」と申し出ることは可能です。
Q6: SES企業でも使えますか?
A: はい、使えます。
むしろ、SES企業こそ退職代行を使うべきケースが多いです。
実際、退職代行「モームリ」の調査では、利用者の7〜8割がSES企業のエンジニアです。
客先との契約があっても、あなたの退職権には影響しません。
Q7: 次の転職に影響しますか?
A: 基本的には影響しません。
退職代行を使ったことは、次の会社には伝わりません(前の会社が言いふらすことは、名誉毀損になる可能性があります)。
面接で退職理由を聞かれても、「前職の労働環境が合わなかった」と説明すれば問題ありません。
Q8: 退職代行を使ったことを後悔しますか?
A: 人によります。
退職代行を使った人の多くは、「もっと早く使えば良かった」と感じています。精神的・身体的に追い詰められた状態から解放されるからです。
一方で、「自分で伝えれば良かった」と後悔する人も一部います。特に、会社の人間関係が良好だった場合です。
自分の状況をよく考え、本当に退職代行が必要かどうかを判断しましょう。
まとめ:あなたの選択を応援します
退職代行は「逃げ」ではない
「退職代行を使うのは逃げだ」という意見もあります。しかし、それは間違いです。
自分の健康と人生を守るための、正当な選択です。
精神的・身体的に限界を迎えている状態で、無理に退職交渉をする必要はありません。プロに任せることで、安全かつ確実に退職できます。
重要なのはあなたの健康と幸せ
会社やプロジェクトよりも、あなた自身の健康と幸せが最優先です。
「もう少し頑張れば」と自分を追い込み、うつ病や過労で倒れてしまっては元も子もありません。
限界を感じたら、退職代行という選択肢があることを思い出してください。
退職は新しいスタートの第一歩
退職は、終わりではなく、新しいスタートの第一歩です。
退職代行を使って辞めた後、多くのエンジニアがより良い職場環境で働き、充実したキャリアを築いています。
今の職場が全てではありません。世界にはたくさんの企業があり、あなたに合った環境が必ずあります。
今日から始めるアクションプラン
ステップ1: 無料相談(今日)
まずは、退職代行サービスに無料相談してみましょう。LINEやメールで気軽に相談できます。
相談したからといって、必ず利用する必要はありません。話を聞いて、選択肢を増やしておくことが大切です。
ステップ2: 退職後のプランを考える(1週間)
- 次の転職先をどう探すか
- 失業保険は必要か
- 生活費はどうするか
退職後の生活プランを考えておくと、安心して退職できます。
ステップ3: 決断する(1週間)
退職代行を使うかどうか、最終的に決断します。
迷う場合は、以下の質問を自分に問いかけてみてください:
- 今の職場で働き続けることで、健康を害するリスクはあるか?
- 自分で退職を伝える気力があるか?
- 退職代行の費用(2〜5万円)を払う価値はあるか?
ステップ4: 実行する(即日)
決断したら、すぐに実行しましょう。
業者に申し込み、必要な情報を伝え、支払いを済ませれば、翌日には退職の意思が会社に伝わります。
最後に:あなたの勇気を讃えます
この記事を最後まで読んでいるあなたは、現状を変えたいと真剣に考えている人です。
その勇気は、素晴らしいことです。
退職は、人生の大きな決断です。不安や恐れがあるのは当然です。
でも、あなたには新しい未来を切り開く力があります。
退職代行という選択肢を使うことは、決して恥ずかしいことではありません。
あなたの人生は、あなたが決めるものです。
今の職場がすべてではありません。もっと良い環境が、必ずあります。
あなたの新しいスタートを、心から応援しています。
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この記事を書いた人
異業種からエンジニアへの転職を経験し、SES企業とWeb系企業の両方で働いてきました。退職に悩むエンジニアの相談を受けることも多く、その経験から退職代行の情報を発信しています。
 
  
  
  
  
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