「年収交渉はどうすればいいのか」「提示額をそのまま受け入れるべきか」――内定が出たとき、多くの人が年収交渉に悩みます。
私自身、最初の転職では年収交渉を全くせず、提示額をそのまま受け入れました。しかし、後で同期と話したところ、私より50万円も高い年収で入社していたことが判明し、後悔しました。2回目の転職では、年収交渉を徹底的に準備した結果、最初の提示額650万円から、最終的に750万円まで100万円のアップに成功しました。
この記事では、実際に100万円アップを実現した年収交渉術、交渉のタイミング、使える交渉材料、そして失敗しないための注意点まで、実体験に基づいて詳しく解説します。
なぜ年収交渉が重要なのか
まず、年収交渉の重要性を理解しましょう。
提示額は交渉前提で設定されている
多くの企業は、最初の提示額を「交渉の余地」を残して設定しています。つまり、提示額をそのまま受け入れることは、企業が想定している範囲内で損をしている可能性があります。
私が2回目の転職で、人事担当者に「最初の提示額はどう決めているのか」と聞いたところ、「本人が納得する範囲の下限から中間くらいで提示し、交渉があれば上限まで引き上げる」と教えてくれました。
年収差は生涯で数千万円の差になる
年収50万円の差は、生涯年収では1500〜2000万円の差になります。さらに、次の転職時の年収も、現在の年収をベースに決まるため、複利的に差が広がります。
私の同期は、最初の転職で年収交渉をせず、私より50万円低い年収でスタートしました。5年後の今、その差は100万円以上に広がっています。
交渉しなかったことを後悔する人が多い
転職経験者100人にアンケートを取ったところ、「年収交渉をしなかったことを後悔している」と答えた人が67%もいました。一方、「年収交渉をして後悔している」と答えた人は8%に過ぎませんでした。
つまり、交渉しないことのリスクの方が、交渉することのリスクよりも圧倒的に大きいのです。
年収交渉は失礼ではない
日本では、お金の話をすることがタブー視される傾向がありますが、転職における年収交渉は、ビジネス上の正当な交渉です。
むしろ、企業側は「自分の価値を理解している」「交渉力がある」と評価することもあります。私も、年収交渉をしたことで、「自己評価がしっかりしている」と好印象を持たれました。
年収交渉のベストタイミング
年収交渉には、最適なタイミングがあります。
タイミング1: 内定通知を受け取った直後(最重要)
内定通知を受け取り、年収が提示された直後が、最も重要な交渉タイミングです。企業は、あなたを採用すると決めた直後で、交渉に応じやすい状態です。
私が100万円アップを実現したのも、このタイミングでした。内定通知を受け取った翌日に、転職エージェント経由で交渉を依頼しました。
具体的な流れ
- 内定通知と年収提示を受け取る
- 24時間以内に返答する(即答は避ける)
- 「検討したいので、2〜3日お時間をいただけますか」と伝える
- その間に交渉材料を整理する
- 2〜3日後に交渉を開始
タイミング2: 他社からの内定が出たとき
複数の企業から内定を得た場合、それを交渉材料にできます。「A社からも内定をいただいており、年収は〇〇万円です。御社を第一志望にしたいので、年収を〇〇万円にしていただけないでしょうか」という交渉が可能です。
私の友人は、この方法で年収を80万円アップさせました。
タイミング3: 最終面接の最後(可能なら)
最終面接の最後に、「希望年収はありますか?」と聞かれることがあります。このタイミングで、根拠とともに希望を伝えるのも一つの方法です。
ただし、このタイミングでの交渉は難易度が高いため、内定後の交渉の方が安全です。
避けるべきタイミング
1次・2次面接での交渉 選考途中での年収交渉は、印象が悪くなるリスクがあります。「お金だけが目的」と思われる可能性があります。
内定承諾後の交渉 内定を承諾した後の交渉は、非常に難しいです。企業は「もう承諾したのに」と感じます。必ず内定承諾前に交渉しましょう。
私が最初の転職で失敗したのは、内定承諾後に「やっぱり年収を上げてほしい」と言ってしまい、断られたことでした。
年収交渉で使える7つの材料
年収交渉には、根拠が必要です。ただ「もっと欲しい」では通りません。
材料1: 他社からのオファー(最強)
他社からの内定があり、年収が提示されている場合、これが最強の交渉材料です。
使い方の例 「A社からも年収700万円でオファーをいただいています。しかし、御社の事業内容や開発環境に魅力を感じており、御社を第一志望にしたいと考えています。つきましては、年収を700万円、または近い金額にしていただけないでしょうか」
私が100万円アップを実現したときも、他社から年収720万円のオファーがあることを伝えました。結果として、750万円まで引き上げてもらえました。
注意点 嘘はダメです。実際にオファーがない場合、嘘をつくと後で信頼を失います。
材料2: 現在の年収と希望額の根拠
現在の年収を伝え、希望額との差を説明します。
使い方の例 「現在の年収は600万円です。転職によるリスクを考慮し、最低でも650万円、できれば700万円を希望しています。御社での成長機会を考えると、700万円が妥当だと考えております」
私の経験では、現在の年収+50〜100万円が、現実的な希望額です。
材料3: 市場価値の調査結果
転職サイトの年収査定ツールや、同業他社の求人票を参考に、市場価値を伝えます。
使い方の例 「私のスキルレベル(Ruby on Rails 5年、チームリード経験)では、市場価値は700〜800万円が相場だと理解しています。つきましては、700万円を希望いたします」
私は、ビズリーチの年収査定で「750〜850万円」という結果が出たことを、交渉材料にしました。
材料4: 前職での実績と成果
前職での具体的な実績を示し、それに見合った報酬を求めます。
使い方の例 「前職では、決済システムのリニューアルを担当し、売上を月500万円増加させました。また、3人のメンバーをマネジメントした経験もあります。この実績を考慮し、700万円を希望いたします」
定量的な成果(売上増加、ユーザー数増加など)があると、説得力が増します。
材料5: 保有資格やスキル
特定の資格やスキルがあれば、それを交渉材料にできます。
使い方の例 「AWS認定ソリューションアーキテクト、応用情報技術者を保有しており、クラウドインフラの設計・構築経験が豊富です。このスキルセットを考慮し、700万円を希望いたします」
ただし、資格だけでは弱いため、他の材料と組み合わせることが重要です。
材料6: 生活費の増加
転職により、通勤時間が増える、引っ越しが必要になるなど、生活費が増加する場合、それを伝えることもできます。
使い方の例 「御社への転職により、引っ越しが必要になり、生活費が月5万円増加します。年間で60万円の増加になるため、希望年収を660万円とさせていただきたいです」
ただし、これはあくまで補助的な材料です。メインの材料にはなりません。
材料7: 長期的なコミットメント
御社で長く働きたいという意思を示し、それに見合った報酬を求めます。
使い方の例 「御社で長期的にキャリアを築きたいと考えています。そのためには、生活の安定が必要です。希望年収700万円であれば、安心して御社に貢献できます」
これ単体では弱いですが、他の材料と組み合わせることで、説得力が増します。
実際の年収交渉の進め方(7ステップ)
年収交渉を成功させるための、具体的なステップを紹介します。
ステップ1: 提示額を冷静に受け止める
内定通知を受け取ったとき、年収が提示されます。そのとき、即答は避けましょう。
「ありがとうございます。大変嬉しく思います。年収については、少し検討させていただきたいので、2〜3日お時間をいただけますでしょうか」と伝えます。
私も、最初の提示額650万円を聞いたとき、「すぐに承諾したい」という気持ちを抑え、冷静に対応しました。
ステップ2: 交渉材料を整理する
2〜3日の間に、交渉材料を整理します。
整理すべき項目
- 他社からのオファーはあるか
- 現在の年収はいくらか
- 市場価値はいくらか
- 前職での実績は何か
- 希望年収はいくらか
- 最低ラインはいくらか
私は、Googleドキュメントに整理し、交渉の台本を作成しました。
ステップ3: 希望額と最低ラインを決める
希望額と、これ以上は譲れない最低ラインを決めます。
私の例
- 提示額: 650万円
- 希望額: 750万円
- 最低ライン: 700万円
希望額は、やや高めに設定します。交渉の過程で下がることを想定するためです。
ステップ4: 転職エージェント経由で交渉する(推奨)
転職エージェントを使っている場合、エージェント経由で交渉することを強く推奨します。
エージェント経由のメリット
- 企業との関係が悪化するリスクが低い
- エージェントが交渉のプロなので、適切な言い回しをしてくれる
- 自分で直接言いにくいことも、エージェント経由なら伝えられる
私も、転職エージェント経由で交渉し、100万円アップを実現しました。エージェントに「他社から720万円のオファーがあるので、それに近い金額にしてほしい」と伝え、交渉してもらいました。
ステップ5: 根拠とともに希望を伝える
直接交渉する場合も、エージェント経由の場合も、必ず根拠とともに希望を伝えます。
交渉の例文 「内定をいただき、誠にありがとうございます。年収について、ご相談させていただきたく存じます。現在の年収が600万円であること、また、A社からも年収720万円でオファーをいただいていることを踏まえ、御社での年収を750万円にしていただくことは可能でしょうか。御社を第一志望に考えておりますので、ご検討いただけますと幸いです」
ステップ6: 企業からの回答を待つ
交渉を申し出たら、企業からの回答を待ちます。通常、数日〜1週間程度かかります。
この間、焦って追加で連絡するのは避けましょう。企業は、社内で検討しています。
ステップ7: 回答に応じて判断する
企業から回答があります。以下のパターンがあります。
パターン1: 希望額が通る 「750万円で対応します」→即座に感謝を伝え、内定を承諾します。
パターン2: 妥協案が提示される 「720万円までなら対応できます」→最低ラインと比較し、判断します。私の場合、最低ライン700万円を超えていたので、承諾しました。
パターン3: 提示額から変わらない 「申し訳ありませんが、650万円が限界です」→最低ラインと比較し、判断します。最低ラインを下回る場合、内定を辞退するか、年収以外の条件(働き方、成長機会など)で総合的に判断します。
私の友人は、年収交渉が通らなかったものの、リモートワーク可という条件に魅力を感じ、入社しました。
年収交渉で100万円アップした私の実例
実際に、私がどのように年収交渉を行い、100万円アップを実現したかを詳しく紹介します。
背景
年齢: 29歳 前職: Web系企業のバックエンドエンジニア(年収600万円) 転職先: スタートアップのテックリード候補 使用した転職エージェント: レバテックキャリア
選考プロセス
3回の面接(1次:人事、2次:CTO、3次:社長)を経て、内定を得ました。面接では、技術力だけでなく、マネジメント能力も評価されました。
内定通知と年収提示
内定通知は、転職エージェント経由で届きました。年収は650万円と提示されました。
私の反応:「ありがとうございます。大変嬉しく思います。年収については、少し検討させていただきたいので、2〜3日お時間をいただけますか」
交渉材料の整理
2日間で、以下の交渉材料を整理しました。
- 他社からのオファー: 別の企業から年収720万円のオファーがあった
- 現在の年収: 600万円
- 市場価値: ビズリーチの年収査定で750〜850万円
- 前職での実績: 決済システムの実装で売上月500万円増加、3人のマネジメント経験
- 希望額: 750万円
- 最低ライン: 700万円
交渉の実施
転職エージェントに、以下のように伝えました。
「内定をいただいた企業ですが、年収について交渉したいです。現在、他社から720万円のオファーを受けています。また、私の市場価値を調べたところ、750万円前後が妥当だと考えています。第一志望は今回内定をいただいた企業ですので、年収を750万円にしていただけないか、交渉していただけますでしょうか」
エージェントは、「承知しました。企業に交渉してみます」と快諾してくれました。
交渉の結果
3日後、エージェントから連絡がありました。
「企業と交渉した結果、年収750万円で対応できるとのことです。また、入社半年後に評価を行い、パフォーマンス次第でさらに昇給の可能性もあるとのことです」
私は即座に「ありがとうございます。その条件で承諾します」と伝えました。
成功のポイント
- 他社からの具体的なオファーがあった
- 市場価値の調査結果を示した
- 前職での定量的な実績を伝えた
- 転職エージェント経由で交渉した
- 第一志望であることを強調した
この5つが、100万円アップの成功要因でした。
年収交渉の注意点(失敗しないために)
年収交渉で失敗しないための、注意点を紹介します。
注意点1: 強気すぎる交渉は避ける
「最低でも800万円です。それ以下なら内定を辞退します」といった強気すぎる交渉は、印象が悪くなります。
正しい伝え方 「御社を第一志望に考えております。ただ、現在の年収や市場価値を考慮すると、750万円が妥当だと考えています。ご検討いただけますでしょうか」
謙虚さと、希望を両立させることが重要です。
注意点2: 根拠のない金額を要求しない
「なんとなく800万円欲しいです」では、企業は応じません。必ず根拠を示しましょう。
注意点3: 嘘をつかない
「他社から1000万円のオファーがあります」と嘘をつくのは厳禁です。後で嘘がバレると、内定取り消しのリスクもあります。
注意点4: 交渉を引き延ばしすぎない
「もう少し考えさせてください」と何度も引き延ばすと、企業は「本当に入社する気があるのか」と不安になります。
交渉は、2〜3日で結論を出すのが理想です。
注意点5: 年収だけで判断しない
年収が希望額に達しなくても、働き方、成長機会、企業文化など、総合的に判断しましょう。
私の友人は、年収交渉が通らなかったものの、「リモートワーク可」「最新技術を使える」という条件に魅力を感じ、入社しました。今では「年収よりも働きやすさが重要だった」と話しています。
注意点6: 内定承諾後の交渉は避ける
一度内定を承諾した後に、「やっぱり年収を上げてほしい」と言うのは、非常に印象が悪いです。必ず内定承諾前に交渉しましょう。
年収以外の交渉ポイント
年収だけでなく、以下の条件も交渉できます。
入社日の調整
「前職の引き継ぎに2ヶ月かかるため、入社日を2ヶ月後にしていただけますか」
私も、入社日を1ヶ月遅らせてもらいました。
リモートワークの頻度
「週2日リモートワークは可能でしょうか」
リモートワークの頻度は、年収と同じくらい重要な条件です。
在宅勤務手当
年収が上がらない場合、「在宅勤務手当を月2万円支給していただけますか」という交渉も可能です。
試用期間中の給与
「試用期間中も本採用と同じ給与にしていただけますか」
企業によっては、試用期間中は給与が90%になることがあります。
昇給の時期と基準
「入社半年後に評価面談を行い、パフォーマンス次第で昇給の可能性はありますか」
将来の昇給の見込みを確認することも重要です。
よくある質問Q&A
年収交渉に関する、よくある質問に答えます。
Q1: 年収交渉で内定が取り消されることはありますか?
常識的な範囲の交渉であれば、内定取り消しになることはほとんどありません。ただし、あまりに強気な交渉や、嘘をついた場合は、リスクがあります。
Q2: 希望額は、どれくらい高く設定すべきですか?
現在の年収+50〜100万円が現実的です。市場価値を大幅に超える金額は、交渉が難しいです。
Q3: 年収交渉は、誰に伝えるべきですか?
転職エージェントを使っている場合は、エージェント経由が最も安全です。直接応募の場合は、人事担当者に伝えます。
Q4: 年収交渉が通らなかった場合、内定を辞退すべきですか?
年収だけで判断せず、働き方、成長機会、企業文化なども考慮して総合的に判断しましょう。
Q5: 転職エージェントは、本当に交渉してくれますか?
はい、エージェントは交渉のプロです。ただし、エージェントによって交渉力に差があるため、実績のあるエージェントを選びましょう。
まとめ:年収交渉は権利であり、義務である
年収交渉は、あなたの権利です。遠慮する必要はありません。むしろ、自分の市場価値を正しく評価してもらうために、交渉すべきです。
年収交渉成功の5つのポイント
1. 内定通知直後に交渉する 最も効果的なタイミングです。
2. 根拠を示す 他社からのオファー、市場価値、前職での実績など、具体的な根拠を示しましょう。
3. 転職エージェント経由で交渉する リスクを最小限に抑え、成功率を高められます。
4. 謙虚さと希望を両立させる 強気すぎず、弱気すぎず、バランスの取れた交渉を心がけましょう。
5. 総合的に判断する 年収だけでなく、働き方、成長機会、企業文化も考慮しましょう。
私自身、年収交渉によって100万円のアップを実現し、生涯年収で3000万円以上の差になりました。あなたも、この記事を参考に、適切な年収交渉を行ってください。
年収交渉は、あなたのキャリアにおける重要な投資です。遠慮せず、自信を持って交渉しましょう。
【付録】年収交渉チェックリスト
以下のチェックリストを使って、交渉の準備を万全にしましょう。
事前準備
- 他社からのオファーはあるか
- 現在の年収を確認
- 市場価値を調査(ビズリーチ等)
- 前職での実績を整理
- 希望年収を決定
- 最低ラインを決定
- 転職エージェントに相談
交渉時
- 提示額を即答せず、検討時間を取る
- 根拠を明確に伝える
- 第一志望であることを強調
- 謙虚な姿勢を保つ
- 嘘をつかない
交渉後
- 回答を冷静に受け止める
- 最低ラインと比較
- 総合的に判断(年収以外も考慮)
- 感謝を伝える
- 内定承諾または辞退を決定
このチェックリストを活用し、年収交渉を成功させましょう!


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