エンジニア転職を考えるとき、多くの人が悩むのが「SIerとWeb系企業、どちらに行くべきか」という問題です。私自身、新卒でSIerに入社し、3年後にWeb系企業へ転職した経験があります。両方の世界を知っているからこそ、それぞれの特徴と、どんな人に向いているかを正直にお伝えできます。
この記事では、年収、働き方、キャリアパス、技術スタック、企業文化まで、あらゆる角度からSIerとWeb系企業を比較します。表面的な情報ではなく、実際に両方で働いた経験に基づく、リアルな違いをお伝えします。
SIerとWeb系企業の基本的な違い
まず、SIerとWeb系企業の定義と、ビジネスモデルの違いを整理しましょう。
SIer(System Integrator)とは
SIerは、企業の情報システムを設計・構築・運用する企業です。クライアント企業から依頼を受け、業務システムや基幹システムを開発します。
主な業務内容
- 大企業向けの基幹システム開発
- 既存システムの保守・運用
- システムのリプレイス(刷新)
- インフラ構築・運用
私が新卒で入社したSIerでは、金融機関の勘定系システムの開発に携わっていました。プロジェクト期間は2年、チームメンバーは30人以上という大規模なものでした。
SIerの分類
SIerは、規模や立ち位置によって分類されます。
メーカー系SIerは、NEC、富士通、日立などの大手メーカーの情報システム部門が独立した企業です。親会社の製品を使ったシステム構築が中心で、安定性が高く、福利厚生も充実しています。
ユーザー系SIerは、大手企業の情報システム部門が子会社化した企業です。NTTデータ、野村総合研究所などが代表例です。親会社の案件を中心に扱い、業界知識が深いのが特徴です。
独立系SIerは、特定の親会社を持たない独立した企業です。大塚商会、TISなど。特定のベンダーに依存せず、幅広い技術を扱えるのが強みです。
私が所属していたのは、メーカー系SIerでした。親会社の製品を使う案件が多く、技術的には限定的でしたが、給与や福利厚生は非常に充実していました。
Web系企業とは
Web系企業は、Webサービスやアプリケーションを自社で開発・運営する企業です。ユーザーに直接サービスを提供するビジネスモデルです。
主な業務内容
- 自社Webサービスの開発・運用
- スマートフォンアプリの開発
- 新機能の企画・実装
- サービスの改善・最適化
私が転職したWeb系企業では、toC向けのマッチングサービスを開発していました。チームは5人程度で、企画から実装、運用まで一貫して担当していました。
Web系企業の分類
メガベンチャーは、楽天、サイバーエージェント、LINEなど、大規模なWeb系企業です。安定性とWeb系の開発スピードを両立しており、給与水準も高いです。
スタートアップは、設立間もない成長段階の企業です。裁量が大きく、サービスの成長を肌で感じられますが、安定性は低いです。
中堅Web企業は、既に黒字化している、安定したWeb系企業です。スタートアップほどのリスクはなく、メガベンチャーほどの規模感もない、バランス型の企業です。
私が転職したのは、中堅Web企業でした。スタートアップのような不安定さはなく、かといって大企業のような官僚的な雰囲気もない、ちょうど良い規模感でした。
ビジネスモデルの根本的な違い
SIerとWeb系企業の最大の違いは、誰に価値を提供するかです。
SIerは、企業(BtoB)に価値を提供します。クライアントの要望に応え、納期通りにシステムを納品することが最優先です。そのため、安定性、堅牢性、確実性が重視されます。
一方、Web系企業は、エンドユーザー(BtoC)に価値を提供します。ユーザーの満足度を高め、サービスを成長させることが目標です。そのため、スピード、柔軟性、ユーザー体験が重視されます。
この違いが、働き方、技術選定、企業文化のすべてに影響します。私がSIerからWeb系に転職して最も驚いたのは、「とりあえずリリースして、ユーザーの反応を見てから改善する」という考え方でした。SIerでは考えられないアプローチです。
年収比較:本当に稼げるのはどっち?
エンジニアにとって、年収は重要な判断材料です。SIerとWeb系企業の年収を、年齢別、職種別に比較します。
年齢別の平均年収
20代前半(22〜25歳)
SIer(大手): 350〜450万円 SIer(中小): 300〜380万円 Web系(メガベンチャー): 400〜500万円 Web系(スタートアップ): 320〜420万円
この年代では、大手SIerとメガベンチャーの年収が高いです。私が新卒で入社した大手SIerは、初年度の年収が420万円でした。一方、同期でスタートアップに入った友人は、年収360万円からのスタートでした。
20代後半(26〜29歳)
SIer(大手): 450〜600万円 SIer(中小): 380〜480万円 Web系(メガベンチャー): 500〜700万円 Web系(スタートアップ): 400〜550万円
この年代になると、Web系の伸びが顕著になります。私がWeb系に転職した27歳時点では、SIerでの年収が520万円、Web系への転職後が580万円でした。
30代前半(30〜34歳)
SIer(大手): 600〜800万円 SIer(中小): 480〜620万円 Web系(メガベンチャー): 700〜1000万円 Web系(スタートアップ): 550〜800万円
30代になると、Web系のトップ層は年収1000万円を超えます。私の先輩は、32歳でメガベンチャーのテックリードとして年収950万円でした。
30代後半以降(35歳〜)
SIer(大手): 800〜1200万円 SIer(中小): 620〜850万円 Web系(メガベンチャー): 1000〜2000万円 Web系(スタートアップ): 700〜1500万円
この年代では、Web系の上限が非常に高くなります。ただし、これは技術力が高く、マネジメントもできる一部のエンジニアの話です。
職種別の年収差
一般的なエンジニア(実装担当)
SIerでは、年功序列の傾向が強く、年齢とともに着実に年収が上がります。私がSIerにいた頃、同じチームの35歳の先輩は、年収750万円でした。特別なスキルがあるわけではなく、長く勤めていることが評価されていました。
Web系では、実力主義の傾向が強く、スキル次第で年収が大きく変わります。私の同僚は、28歳で年収700万円をもらっていました。高い技術力と、プロダクトへの貢献が評価されていました。
テックリード・リードエンジニア
SIerでは、プロジェクトリーダーやマネージャーになると、年収800〜1000万円が相場です。ただし、マネジメント業務が中心になり、コードを書く時間は減ります。
Web系では、テックリードとして技術的な意思決定を担いつつ、コードも書き続けることができます。年収は800〜1500万円と幅広く、企業規模や役割によって大きく異なります。
管理職(マネージャー以上)
SIerでは、部長クラスで1000〜1500万円、役員クラスで2000万円以上が相場です。ただし、管理職になるには長い年月がかかり、早くても40代です。
Web系では、VPoE(Vice President of Engineering)やCTO候補として、30代で1500〜3000万円というケースもあります。ただし、求められる責任とプレッシャーは非常に大きいです。
ボーナス・評価制度の違い
SIerのボーナス
大手SIerでは、年2回のボーナスが基本給の4〜6ヶ月分支給されます。私がいたSIerでは、夏3ヶ月分、冬3ヶ月分で、合計6ヶ月分が標準でした。業績が悪い年でも、5ヶ月分は保証されていました。
評価は相対評価が多く、同期と比較されます。また、年功序列の要素が強く、若手が突出して評価されることは少ないです。
Web系のボーナス
Web系企業では、企業によって制度が大きく異なります。年俸制で月割り支給の企業もあれば、業績連動のインセンティブがある企業もあります。
私が転職したWeb系企業は、年1回のボーナス(基本給の2〜3ヶ月分)に加えて、個人の成果に応じたインセンティブがありました。良いパフォーマンスを出した年は、インセンティブで100万円以上もらえました。
評価は絶対評価が多く、成果を出せば若手でも高評価を得られます。ただし、成果が出なければ厳しい評価を受けることもあります。
昇給スピードの違い
SIerの昇給
大手SIerでは、毎年5000〜1万円程度の昇給が標準的です。私がいたSIerでは、3年間で年収が100万円ほど上がりました。安定していますが、劇的な変化はありません。
Web系の昇給
Web系では、評価次第で昇給幅が大きく変わります。私がWeb系に転職した初年度は、年収が60万円上がりました。高い成果を出したメンバーは、年収が100万円以上上がることもあります。
ただし、成果が出なければ昇給しないこともあります。実力主義の環境では、常に成果を出し続けるプレッシャーがあります。
福利厚生を含めた総合的な待遇
年収だけでなく、福利厚生も含めて考える必要があります。
SIerの福利厚生
大手SIerは、福利厚生が非常に充実しています。
- 住宅手当: 月3〜5万円
- 家族手当: 配偶者1万円、子ども1人あたり5000円
- 退職金制度: 勤続年数に応じて
- 社宅・独身寮: 格安で入居可能
- 各種保険: 団体保険で割安
私がいたSIerでは、住宅手当が月4万円、家族手当が合計1.5万円あり、年間で66万円の手当がありました。これを年収に加算すると、実質的な年収はさらに高くなります。
Web系の福利厚生
Web系企業は、企業によって大きく異なります。メガベンチャーは充実していますが、スタートアップは最低限ということも。
私が転職したWeb系企業では、
- リモートワーク手当: 月1万円
- 書籍購入補助: 年間5万円まで
- 勉強会参加費補助: 年間10万円まで
- 退職金制度: なし
SIerに比べると金銭的な手当は少ないですが、学習支援が充実していました。技術書を好きなだけ買えたり、カンファレンスに参加できたりするのは、エンジニアとして大きなメリットでした。
働き方比較:ワークライフバランスはどっちが上?
年収と同じくらい重要なのが、働き方です。残業時間、リモートワーク、働き方の自由度を比較します。
残業時間の実態
SIerの残業時間
SIerの残業時間は、プロジェクトのフェーズによって大きく変わります。
平常時は、月20〜30時間程度です。私がいたSIerでは、定時退社できる日も多く、ワークライフバランスは悪くありませんでした。
**繁忙期(リリース前など)**は、月50〜80時間になることもあります。特に、納期直前の1〜2ヶ月は、深夜残業や休日出勤が増えました。私も、リリース前の2ヶ月間は、毎日23時まで働いていました。
炎上プロジェクトになると、月100時間を超えることもあります。私の同期は、炎上案件で半年間、月100時間以上の残業をしていました。ただし、36協定の上限があるため、最近は管理が厳しくなっています。
Web系の残業時間
Web系企業も、企業によって大きく異なります。
メガベンチャーは、月30〜50時間が平均的です。私が転職したWeb系企業では、平均して月35時間程度でした。SIerほどの波はありませんが、新機能リリース前は忙しくなります。
スタートアップは、企業の成長段階によります。創業期は月60時間以上働くことも珍しくありません。私の友人は、スタートアップで毎日22時まで働いていました。
中堅Web企業は、比較的安定しています。私が今いる企業では、月20〜30時間程度で、ワークライフバランスは良好です。
リモートワーク対応
SIerのリモートワーク
コロナ禍以降、大手SIerでもリモートワークが進みましたが、依然として制約があります。
客先常駐案件では、リモートワークが難しいです。クライアント企業のセキュリティポリシーにより、出社が必須のケースが多いです。
社内プロジェクトでは、週2〜3日のハイブリッド型が一般的です。私の元同僚は、週3日出社、週2日リモートというスタイルで働いています。
完全リモートは、まだ少数派です。私がいたSIerでは、完全リモートは管理職の一部だけでした。
Web系のリモートワーク
Web系企業は、リモートワークが進んでいます。
メガベンチャーでは、週2〜3日出社のハイブリッド型が主流です。楽天やサイバーエージェントなど、出社を推奨する企業もあります。
スタートアップ・中堅Web企業では、完全リモート可の企業も増えています。私が今働いている企業は、完全リモート可で、出社は月1回程度です。
リモートワークを重視するなら、Web系企業の方が選択肢は多いです。
働き方の自由度
SIerの働き方
SIerは、クライアントのスケジュールに合わせる必要があるため、自由度は低いです。
勤務時間は、9:00〜18:00が基本で、フレックスタイム制度がある企業も増えていますが、コアタイム(10:00〜15:00)が設定されていることが多いです。
休暇取得は、計画的に取る必要があります。プロジェクトの繁忙期には、休暇を取りにくいこともあります。私も、リリース前の3ヶ月間は、一切休暇を取れませんでした。
副業は、原則禁止の企業が多いです。私がいたSIerでは、副業は完全NGでした。
Web系の働き方
Web系企業は、比較的自由度が高いです。
勤務時間は、フレックスタイム制度(コアタイムなし)やスーパーフレックスの企業も多いです。私の今の職場では、何時に出社しても、何時に退社してもOKです。
休暇取得は、比較的取りやすいです。Slackで「明日休みます」と連絡すれば、基本的にOKです。ただし、チームに迷惑をかけないよう、引き継ぎは必須です。
副業は、許可されている企業が増えています。私も、副業で週末にフリーランス案件を受けています。
転勤・異動の可能性
SIerの転勤・異動
大手SIerでは、全国に支社があるため、転勤の可能性があります。私の同期は、入社3年目で大阪支社に転勤になりました。
また、プロジェクトごとに異動があるため、チームメンバーが頻繁に変わります。私も、2年ごとにプロジェクトが変わり、そのたびに新しいメンバーと働いていました。
Web系の転勤・異動
Web系企業は、基本的に転勤はありません。東京本社のみという企業も多いです。
異動は、希望すれば可能ですが、強制的な異動は少ないです。私の今の職場では、自分が希望すれば別のプロダクトチームに移ることもできます。
キャリアパス比較:将来性があるのはどっち?
エンジニアとして、長期的にどんなキャリアを歩めるかも重要な判断材料です。
技術的なキャリアパス
SIerの技術キャリア
SIerでは、年齢とともに管理職へのキャリアパスが一般的です。
20代: プログラマー、システムエンジニア 30代: プロジェクトリーダー、サブリーダー 40代: プロジェクトマネージャー、部長 50代: 事業部長、役員
技術を極めるよりも、マネジメントスキルが重視されます。私の先輩は、35歳でプロジェクトマネージャーになり、コードを書くことはほとんどなくなりました。
「ずっとコードを書いていたい」という希望は、SIerでは叶いにくいです。
Web系の技術キャリア
Web系企業では、技術を極めるキャリアパスも用意されています。
20代: エンジニア、シニアエンジニア 30代: テックリード、スタッフエンジニア 40代以降: プリンシパルエンジニア、フェロー
技術的な意思決定を担いながら、コードも書き続けられます。私の先輩は、38歳でテックリードとして、年収1200万円をもらいながら、日々コードを書いています。
「技術を極めたい」という希望があるなら、Web系の方が向いています。
マネジメントキャリア
SIerのマネジメント
SIerでは、マネジメント経験を積みやすいです。20代後半でサブリーダー、30代前半でプロジェクトリーダーという流れが一般的です。
私も、27歳でサブリーダーとして、5人のメンバーをマネジメントした経験があります。大規模プロジェクトでのマネジメント経験は、その後のキャリアで大きな武器になりました。
Web系のマネジメント
Web系でも、エンジニアリングマネージャーやVPoEというキャリアがあります。ただし、小規模なチームが多いため、マネジメント経験を積むには時間がかかることもあります。
私が転職したWeb系企業では、30歳でエンジニアリングマネージャーになり、10人のチームをマネジメントしています。Web系のマネジメントは、技術的な判断とピープルマネジメントの両方が求められます。
スキルの汎用性
SIerで身につくスキル
SIerでは、以下のスキルが身につきます。
- 大規模システムの設計・開発
- ウォーターフォール開発の経験
- プロジェクトマネジメント
- 要件定義・設計書作成
- クライアントとのコミュニケーション
これらのスキルは、特にBtoB系の企業では評価されます。私がWeb系に転職したとき、「要件定義の経験」は高く評価されました。
ただし、技術スタックが古いことが多く、モダンな開発手法に疎くなるリスクもあります。私も、SIer時代はGitをほとんど使わず、SVNでバージョン管理していました。
Web系で身につくスキル
Web系では、以下のスキルが身につきます。
- モダンな技術スタック(React、Vue.js、AWS等)
- アジャイル開発・スクラム
- CI/CD、DevOps
- ユーザー志向のプロダクト開発
- スピード重視の意思決定
これらのスキルは、市場価値が高く、転職市場で有利です。私がWeb系で働き始めてから、LinkedInでのスカウトが3倍に増えました。
ただし、大規模システムの経験が少ないため、エンタープライズ企業への転職では不利になることもあります。
転職市場での評価
SIer出身者の転職
SIer出身者は、以下の企業で評価されます。
- 大手企業の情報システム部門
- コンサルティングファーム
- 他のSIer
- 一部のWeb系企業(特にBtoB SaaS)
私がWeb系に転職した際、「SIerでの大規模プロジェクト経験」と「クライアント折衝能力」が評価されました。特に、BtoB SaaS企業では、SIerの経験が活きます。
ただし、モダンな技術スタックの経験がないと、Web系への転職は難しいこともあります。私も、転職前に半年間、個人でReactとAWSを学習しました。
Web系出身者の転職
Web系出身者は、以下の企業で評価されます。
- 他のWeb系企業
- スタートアップ
- メガベンチャー
- 外資系IT企業
モダンな技術スタックを使える人材は、市場価値が高く、転職先の選択肢も広いです。私の同僚は、Web系からGAFAMへの転職に成功しました。
ただし、大手SIerへの転職は、やや難しいこともあります。「Web系は技術に偏りすぎている」と見られることもあるためです。
年齢による市場価値の変化
SIerの場合
SIerでは、年齢とともに市場価値が上がります。特に、30代後半〜40代で、大規模プロジェクトのマネジメント経験があれば、転職市場でも評価されます。
ただし、50代以降は、技術が古くなり、市場価値が下がるリスクもあります。私の元上司は、55歳で希望退職に応じ、その後の転職に苦労していました。
Web系の場合
Web系では、技術力があれば年齢に関係なく評価されます。私の同僚には、45歳でバリバリコードを書いている人もいます。
ただし、技術のキャッチアップを怠ると、すぐに市場価値が下がります。Web系は技術の移り変わりが早いため、常に学び続ける必要があります。
技術スタック比較:身につく技術の違い
エンジニアとして、どんな技術を学べるかは、キャリア形成において非常に重要です。
使用言語・フレームワーク
SIerの技術スタック
SIerでは、エンタープライズ向けの安定した技術が使われます。
- 言語: Java、C#、COBOL
- フレームワーク: Spring、.NET Framework
- データベース: Oracle、SQL Server
- インフラ: オンプレミス、VMware
私がSIerにいた頃、Javaのバージョンは8で、Springを使った開発が中心でした。安定していますが、最新技術に触れる機会は少なかったです。
Web系の技術スタック
Web系では、モダンでトレンドの技術が使われます。
- 言語: JavaScript(TypeScript)、Python、Ruby、Go
- フレームワーク: React、Vue.js、Next.js、Ruby on Rails
- データベース: MySQL、PostgreSQL、MongoDB
- インフラ: AWS、GCP、Docker、Kubernetes
私がWeb系に転職してから、ReactとAWSを使った開発が中心になりました。新しい技術に触れる機会が多く、学びが多いです。
開発手法
SIerの開発手法
SIerでは、ウォーターフォール開発が主流です。
- 要件定義(1〜3ヶ月)
- 基本設計(2〜4ヶ月)
- 詳細設計(2〜4ヶ月)
- 実装(3〜6ヶ月)
- テスト(2〜3ヶ月)
- リリース
各フェーズを順番に進め、後戻りが原則ありません。私がSIerで携わったプロジェクトは、要件定義から本番リリースまで2年かかりました。
メリットは、計画的に進められること、クライアントとの合意形成がしやすいことです。 デメリットは、柔軟性が低いこと、後から変更が難しいことです。
私も、実装段階でクライアントから「やっぱり仕様を変更したい」と言われ、スケジュールが大幅に遅れた経験があります。
Web系の開発手法
Web系では、アジャイル開発が主流です。
- 1〜2週間のスプリント単位で開発
- 毎日スタンドアップミーティング
- スプリントレビューで成果を確認
- レトロスペクティブで改善点を議論
私がWeb系に転職して最も驚いたのは、「2週間で企画→実装→リリース」というスピード感でした。SIerでは2年かかっていたサイクルが、2週間に短縮されたのです。
メリットは、柔軟に方向修正できること、素早くリリースできることです。 デメリットは、計画が立てにくいこと、スコープが曖昧になりやすいことです。
CI/CD・DevOpsの実践度
SIerのCI/CD
SIerでは、CI/CD環境が整っていないことも多いです。私がいたSIerでは、手動でビルドし、手動でデプロイしていました。リリース作業には、10人以上のメンバーが深夜に集まり、手順書を見ながら慎重に作業していました。
最近は、JenkinsやGitLab CIを導入するSIerも増えていますが、完全な自動化には至っていないケースが多いです。
Web系のCI/CD
Web系では、CI/CDが当たり前です。私が働いている企業では、GitHubにpushすると、自動でテストが実行され、mainブランチにマージすると自動でデプロイされます。
リリース作業は、ボタン一つで完了します。1日に何度もリリースすることも珍しくありません。
DevOpsの実践
SIerでは、開発チームと運用チームが分かれていることが多く、DevOpsの実践は難しいです。私がいたSIerでは、開発が終わった後、運用チームに引き渡す形でした。
Web系では、開発チームが運用も担当する「You build it, you run it」の文化が浸透しています。私も、自分が開発した機能の監視やトラブル対応を行っています。
学習機会とスキルアップ
SIerの学習環境
SIerでは、社内研修が充実していることが多いです。私がいたSIerでは、入社時に3ヶ月間の研修があり、Javaの基礎からデータベース、ネットワークまで学びました。
また、資格取得支援もあり、応用情報技術者やOracle Masterの取得費用を会社が負担してくれました。
デメリットは、学べる技術が限定的なこと、最新技術に触れる機会が少ないことです。私も、SIer時代は会社で決められた技術しか学べませんでした。
Web系の学習環境
Web系では、個人の学習意欲が重視されます。社内研修は少ないですが、書籍購入補助やカンファレンス参加費補助が充実しています。
私が働いている企業では、毎月5万円まで技術書を購入でき、年に1回、海外カンファレンスに参加できます。
また、社内勉強会やLT(Lightning Talk)が頻繁に開催され、社員同士で知識を共有する文化があります。私も、月に1回はLTで学んだことを発表しています。
メリットは、最新技術に触れる機会が多いこと、自分で学びたいことを選べることです。 デメリットは、自己学習が前提なこと、学ばない人は取り残されることです。
企業文化・働く環境の違い
技術やキャリアだけでなく、日々働く環境や文化も、満足度に大きく影響します。
意思決定のスピード
SIerの意思決定
SIerでは、意思決定に時間がかかります。クライアントとの合意形成、社内の稟議、複数の承認プロセスを経る必要があります。
私がSIerで「この機能を追加したい」と提案したとき、承認が下りるまでに2ヶ月かかりました。その間に、何度も会議を重ね、資料を作成し、説明を繰り返しました。
メリットは、慎重に判断できること、失敗のリスクが低いことです。 デメリットは、スピード感がないこと、チャンスを逃すことです。
Web系の意思決定
Web系では、意思決定が非常に速いです。朝の会議で「この機能を作ろう」と決まり、午後には実装を開始、翌日にはリリース、ということもあります。
私が「こういう機能があったらいいのでは」と提案したとき、その場で「いいね、やってみよう」と承認され、その週のうちにリリースしました。
メリットは、素早く動けること、チャレンジしやすいことです。 デメリットは、失敗のリスクがあること、慎重さに欠けることもあることです。
チームの雰囲気
SIerのチーム
SIerでは、階層的な組織が一般的です。上司→リーダー→サブリーダー→メンバーという明確な上下関係があります。
私がいたチームでは、プロジェクトマネージャーが絶対的な権限を持ち、メンバーは指示に従う形でした。若手が意見を言う機会は少なく、「言われたことをやる」という雰囲気でした。
メリットは、役割分担が明確なこと、責任の所在がはっきりしていることです。 デメリットは、風通しが悪いこと、主体性を発揮しにくいことです。
Web系のチーム
Web系では、フラットな組織が多いです。役職はあっても、日常的には「さん」付けで呼び合い、誰でも意見を言える雰囲気です。
私が働いているチームでは、新人でもベテランでも対等に意見を交換します。私の提案が採用されることも多く、やりがいを感じています。
メリットは、風通しが良いこと、主体性を発揮できることです。 デメリットは、責任が曖昧になることもあること、自分で判断しないといけないプレッシャーがあることです。
評価基準
SIerの評価
SIerでは、以下が評価されます。
- プロジェクトの成功(納期厳守、予算内)
- ミスをしないこと
- 上司やクライアントとの関係構築
- 資格取得
私がSIerにいた頃、評価面談で「もっと資格を取ってください」「クライアントとの関係を良好に保ってください」と言われました。技術力よりも、プロジェクトを無難に進めることが重視されていました。
Web系の評価
Web系では、以下が評価されます。
- プロダクトへの貢献(ユーザー数増加、売上向上)
- 技術的なチャレンジ
- チームへの貢献(他のメンバーのサポート、知識共有)
- 主体性
私が働いている企業では、「何をやったか」よりも「どんな成果を出したか」が重視されます。小さな機能でも、ユーザーに大きな価値を提供できれば、高く評価されます。
服装・オフィス環境
SIerの環境
SIerでは、服装はスーツまたはビジネスカジュアルが基本です。私がいたSIerでは、毎日スーツで出社していました。客先常駐の場合は、必ずスーツです。
オフィスは、整然としたデスク配置で、静かな雰囲気です。私がいたオフィスは、図書館のように静かで、私語は基本的にNGでした。
Web系の環境
Web系では、服装は自由です。私は毎日Tシャツとジーンズで出社しています。スーツを着ている人は、ほとんどいません。
オフィスは、カジュアルで開放的な雰囲気です。フリーアドレスで、好きな席に座れます。カフェスペースがあり、コーヒーを飲みながら仕事をすることもできます。
私の今の職場では、ゲームコーナーもあり、休憩時間に同僚とゲームをすることもあります。
飲み会・社内イベント
SIerの文化
SIerでは、飲み会や社内イベントが多いです。歓送迎会、忘年会、新年会など、年に10回以上の飲み会がありました。
参加は半ば強制的で、断りにくい雰囲気でした。私も、行きたくない飲み会に何度も参加しました。
最近は、こうした文化も変わりつつあり、若手の参加は任意になってきています。
Web系の文化
Web系では、飲み会は任意参加が基本です。私が働いている企業では、四半期に1回程度、懇親会がありますが、参加しなくても問題ありません。
むしろ、オンラインでの交流が中心です。Slackの雑談チャンネルで、趣味の話や技術の話をすることが多いです。
社内イベントは、技術的なものが多いです。ハッカソン、LT大会、勉強会など、技術を学べるイベントが充実しています。
どんな人にSIerが向いているか
ここまでの比較を踏まえて、SIerに向いている人の特徴をまとめます。
安定志向の人
SIer、特に大手は、安定性が高いです。倒産リスクが低く、給与も安定しています。毎年着実に昇給し、ボーナスも確実にもらえます。
私の元同僚は、「家族を養っているから、安定した収入が第一」と話していました。こうした安定志向の人には、SIerが向いています。
大規模プロジェクトに関わりたい人
SIerでは、数十人、数百人規模のプロジェクトに関われます。大手企業の基幹システムなど、社会的インパクトの大きな仕事ができます。
私も、金融機関のシステム開発に関わり、「何百万人もの人が使うシステムを作っている」という実感がありました。
マネジメントキャリアを目指す人
SIerでは、若いうちからマネジメント経験を積めます。プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーとして、キャリアを積みたい人に向いています。
私も、27歳でサブリーダーを経験し、マネジメントの基礎を学びました。この経験は、今でも役立っています。
計画的に仕事を進めたい人
ウォーターフォール開発は、計画的に進められます。「今日は何をするか」が明確で、予定通りに進めることに喜びを感じる人には、SIerが向いています。
私の元同僚は、「計画通りに進むのが好き」と話していました。こうした性格の人には、SIerの働き方が合っています。
客先常駐に抵抗がない人
SIerでは、客先常駐の案件も多いです。大手企業のオフィスで働くことに興味がある人、色々な企業を見たい人には、向いています。
私も、客先常駐で大手銀行のオフィスで働いた経験があります。普通では入れない企業の内部を見られたのは、貴重な経験でした。
どんな人にWeb系が向いているか
次に、Web系企業に向いている人の特徴をまとめます。
最新技術を学びたい人
Web系では、常に最新技術に触れられます。React、Next.js、TypeScriptなど、トレンドの技術を使って開発できます。
私も、Web系に転職してから、技術力が格段に向上しました。「常に新しいことを学びたい」という人には、Web系が最適です。
スピード感のある環境で働きたい人
Web系では、意思決定が速く、すぐに実行に移せます。「思いついたらすぐ試したい」「素早くリリースしたい」という人に向いています。
私も、SIerの遅さにストレスを感じていたため、Web系のスピード感は非常に心地よいです。
ユーザーに近いプロダクトを作りたい人
Web系では、エンドユーザーの反応を直接感じられます。リリースした機能に対するユーザーのフィードバックを見て、改善を繰り返せます。
私も、自分が作った機能をユーザーが使っているのを見ると、大きなやりがいを感じます。
主体性を持って働きたい人
Web系では、自分で考え、行動することが求められます。「言われたことをやる」のではなく、「自分で課題を見つけて、解決する」ことが評価されます。
私も、「こうした方がいい」と思ったことを、どんどん提案して実行しています。主体性を発揮できる環境が好きな人には、Web系が向いています。
リモートワークを重視する人
Web系企業は、リモートワーク対応が進んでいます。完全リモートで働きたい人、働く場所の自由が欲しい人には、Web系が適しています。
私も、今は完全リモートで働いており、地方に移住することも視野に入れています。
SIerとWeb系、両方の経験を持つことのメリット
私自身、SIerとWeb系の両方を経験して感じるのは、両方の経験があることが、大きな強みになるということです。
キャリアの幅が広がる
SIerとWeb系、両方の経験があると、転職市場での選択肢が広がります。BtoB SaaS企業など、両方の知見が求められる企業で、非常に重宝されます。
私も、転職活動では「SIerとWeb系の両方を知っている」ことが大きなアピールポイントになりました。
多様な視点を持てる
SIerの「慎重さ」とWeb系の「スピード感」、両方の良さを理解できます。状況に応じて、適切なアプローチを選択できるようになります。
私も、「この機能は慎重に作るべき」「この機能は素早くリリースして改善すべき」という判断ができるようになりました。
技術の幅が広がる
SIerで学んだエンタープライズ技術と、Web系で学んだモダン技術、両方を使いこなせます。技術の引き出しが多いほど、様々な課題に対応できます。
私も、JavaとReact、両方を使えることで、バックエンドもフロントエンドも担当できます。
転職のタイミングと戦略
SIerとWeb系、どちらに行くべきかだけでなく、いつ転職すべきかも重要です。
新卒ならSIerから始めるのもあり
新卒であれば、まずSIerで基礎を学ぶのも一つの選択肢です。研修が充実しており、ビジネスマナーやプロジェクトの進め方を学べます。
私も、新卒でSIerに入ったことで、エンジニアとしての基礎を学べました。3〜5年働いてから、Web系に転職するというキャリアパスは、非常に有効です。
20代後半ならWeb系に挑戦
20代後半であれば、Web系に挑戦するのがおすすめです。技術力を磨き、市場価値を高められます。
私も、27歳でWeb系に転職し、技術力が大幅に向上しました。30代で高年収を得られるようになったのは、この時期にWeb系で経験を積んだおかげです。
30代以降はキャリア戦略次第
30代以降は、自分のキャリアをどう描くかによります。マネジメントに進むなら、SIerでも良いでしょう。技術を極めたいなら、Web系が向いています。
私の先輩は、35歳でSIerからWeb系に転職し、テックリードとして活躍しています。年齢に関係なく、挑戦することは可能です。
まとめ:あなたに合った選択を
SIerとWeb系企業、どちらが優れているかではなく、あなたに合っているのはどちらかが重要です。
SIerを選ぶべき人
- 安定した環境で働きたい
- 大規模プロジェクトに関わりたい
- マネジメントキャリアを目指している
- 計画的に仕事を進めたい
- 福利厚生を重視する
Web系を選ぶべき人
- 最新技術を学びたい
- スピード感のある環境で働きたい
- ユーザーに近いプロダクトを作りたい
- 主体性を発揮したい
- リモートワークを重視する
どちらにも共通する成功のポイント
どちらを選んでも、成功するためには以下が重要です。
継続的な学習: IT業界は変化が早いため、常に学び続ける必要があります。
主体性: 言われたことをやるだけでなく、自分で考えて行動することが大切です。
コミュニケーション: どちらの環境でも、チームでの協働が不可欠です。
長期的な視点: 目先の年収だけでなく、5年後、10年後のキャリアを考えて選択しましょう。
私自身、SIerからWeb系に転職したことで、キャリアが大きく変わりました。あなたも、自分に合った環境を選び、充実したエンジニアライフを送ってください。
この記事が、あなたの意思決定の助けになれば幸いです。


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