SIerとWeb系企業、どちらを選ぶべき?【年収・働き方・キャリア徹底比較2025】

転職ノウハウ

エンジニア転職を考えるとき、多くの人が悩むのが「SIerとWeb系企業、どちらに行くべきか」という問題です。私自身、新卒でSIerに入社し、3年後にWeb系企業へ転職した経験があります。両方の世界を知っているからこそ、それぞれの特徴と、どんな人に向いているかを正直にお伝えできます。

この記事では、年収、働き方、キャリアパス、技術スタック、企業文化まで、あらゆる角度からSIerとWeb系企業を比較します。表面的な情報ではなく、実際に両方で働いた経験に基づく、リアルな違いをお伝えします。

  1. SIerとWeb系企業の基本的な違い
    1. SIer(System Integrator)とは
    2. Web系企業とは
    3. ビジネスモデルの根本的な違い
  2. 年収比較:本当に稼げるのはどっち?
    1. 年齢別の平均年収
    2. 職種別の年収差
    3. ボーナス・評価制度の違い
    4. 昇給スピードの違い
    5. 福利厚生を含めた総合的な待遇
  3. 働き方比較:ワークライフバランスはどっちが上?
    1. 残業時間の実態
    2. リモートワーク対応
    3. 働き方の自由度
    4. 転勤・異動の可能性
  4. キャリアパス比較:将来性があるのはどっち?
    1. 技術的なキャリアパス
    2. マネジメントキャリア
    3. スキルの汎用性
    4. 転職市場での評価
    5. 年齢による市場価値の変化
  5. 技術スタック比較:身につく技術の違い
    1. 使用言語・フレームワーク
    2. 開発手法
    3. CI/CD・DevOpsの実践度
    4. 学習機会とスキルアップ
  6. 企業文化・働く環境の違い
    1. 意思決定のスピード
    2. チームの雰囲気
    3. 評価基準
    4. 服装・オフィス環境
    5. 飲み会・社内イベント
  7. どんな人にSIerが向いているか
    1. 安定志向の人
    2. 大規模プロジェクトに関わりたい人
    3. マネジメントキャリアを目指す人
    4. 計画的に仕事を進めたい人
    5. 客先常駐に抵抗がない人
  8. どんな人にWeb系が向いているか
    1. 最新技術を学びたい人
    2. スピード感のある環境で働きたい人
    3. ユーザーに近いプロダクトを作りたい人
    4. 主体性を持って働きたい人
    5. リモートワークを重視する人
  9. SIerとWeb系、両方の経験を持つことのメリット
    1. キャリアの幅が広がる
    2. 多様な視点を持てる
    3. 技術の幅が広がる
  10. 転職のタイミングと戦略
    1. 新卒ならSIerから始めるのもあり
    2. 20代後半ならWeb系に挑戦
    3. 30代以降はキャリア戦略次第
  11. まとめ:あなたに合った選択を
    1. SIerを選ぶべき人
    2. Web系を選ぶべき人
    3. どちらにも共通する成功のポイント

SIerとWeb系企業の基本的な違い

まず、SIerとWeb系企業の定義と、ビジネスモデルの違いを整理しましょう。

SIer(System Integrator)とは

SIerは、企業の情報システムを設計・構築・運用する企業です。クライアント企業から依頼を受け、業務システムや基幹システムを開発します。

主な業務内容

  • 大企業向けの基幹システム開発
  • 既存システムの保守・運用
  • システムのリプレイス(刷新)
  • インフラ構築・運用

私が新卒で入社したSIerでは、金融機関の勘定系システムの開発に携わっていました。プロジェクト期間は2年、チームメンバーは30人以上という大規模なものでした。

SIerの分類

SIerは、規模や立ち位置によって分類されます。

メーカー系SIerは、NEC、富士通、日立などの大手メーカーの情報システム部門が独立した企業です。親会社の製品を使ったシステム構築が中心で、安定性が高く、福利厚生も充実しています。

ユーザー系SIerは、大手企業の情報システム部門が子会社化した企業です。NTTデータ、野村総合研究所などが代表例です。親会社の案件を中心に扱い、業界知識が深いのが特徴です。

独立系SIerは、特定の親会社を持たない独立した企業です。大塚商会、TISなど。特定のベンダーに依存せず、幅広い技術を扱えるのが強みです。

私が所属していたのは、メーカー系SIerでした。親会社の製品を使う案件が多く、技術的には限定的でしたが、給与や福利厚生は非常に充実していました。

Web系企業とは

Web系企業は、Webサービスやアプリケーションを自社で開発・運営する企業です。ユーザーに直接サービスを提供するビジネスモデルです。

主な業務内容

  • 自社Webサービスの開発・運用
  • スマートフォンアプリの開発
  • 新機能の企画・実装
  • サービスの改善・最適化

私が転職したWeb系企業では、toC向けのマッチングサービスを開発していました。チームは5人程度で、企画から実装、運用まで一貫して担当していました。

Web系企業の分類

メガベンチャーは、楽天、サイバーエージェント、LINEなど、大規模なWeb系企業です。安定性とWeb系の開発スピードを両立しており、給与水準も高いです。

スタートアップは、設立間もない成長段階の企業です。裁量が大きく、サービスの成長を肌で感じられますが、安定性は低いです。

中堅Web企業は、既に黒字化している、安定したWeb系企業です。スタートアップほどのリスクはなく、メガベンチャーほどの規模感もない、バランス型の企業です。

私が転職したのは、中堅Web企業でした。スタートアップのような不安定さはなく、かといって大企業のような官僚的な雰囲気もない、ちょうど良い規模感でした。

ビジネスモデルの根本的な違い

SIerとWeb系企業の最大の違いは、誰に価値を提供するかです。

SIerは、企業(BtoB)に価値を提供します。クライアントの要望に応え、納期通りにシステムを納品することが最優先です。そのため、安定性、堅牢性、確実性が重視されます。

一方、Web系企業は、エンドユーザー(BtoC)に価値を提供します。ユーザーの満足度を高め、サービスを成長させることが目標です。そのため、スピード、柔軟性、ユーザー体験が重視されます。

この違いが、働き方、技術選定、企業文化のすべてに影響します。私がSIerからWeb系に転職して最も驚いたのは、「とりあえずリリースして、ユーザーの反応を見てから改善する」という考え方でした。SIerでは考えられないアプローチです。

年収比較:本当に稼げるのはどっち?

エンジニアにとって、年収は重要な判断材料です。SIerとWeb系企業の年収を、年齢別、職種別に比較します。

年齢別の平均年収

20代前半(22〜25歳)

SIer(大手): 350〜450万円 SIer(中小): 300〜380万円 Web系(メガベンチャー): 400〜500万円 Web系(スタートアップ): 320〜420万円

この年代では、大手SIerとメガベンチャーの年収が高いです。私が新卒で入社した大手SIerは、初年度の年収が420万円でした。一方、同期でスタートアップに入った友人は、年収360万円からのスタートでした。

20代後半(26〜29歳)

SIer(大手): 450〜600万円 SIer(中小): 380〜480万円 Web系(メガベンチャー): 500〜700万円 Web系(スタートアップ): 400〜550万円

この年代になると、Web系の伸びが顕著になります。私がWeb系に転職した27歳時点では、SIerでの年収が520万円、Web系への転職後が580万円でした。

30代前半(30〜34歳)

SIer(大手): 600〜800万円 SIer(中小): 480〜620万円 Web系(メガベンチャー): 700〜1000万円 Web系(スタートアップ): 550〜800万円

30代になると、Web系のトップ層は年収1000万円を超えます。私の先輩は、32歳でメガベンチャーのテックリードとして年収950万円でした。

30代後半以降(35歳〜)

SIer(大手): 800〜1200万円 SIer(中小): 620〜850万円 Web系(メガベンチャー): 1000〜2000万円 Web系(スタートアップ): 700〜1500万円

この年代では、Web系の上限が非常に高くなります。ただし、これは技術力が高く、マネジメントもできる一部のエンジニアの話です。

職種別の年収差

一般的なエンジニア(実装担当)

SIerでは、年功序列の傾向が強く、年齢とともに着実に年収が上がります。私がSIerにいた頃、同じチームの35歳の先輩は、年収750万円でした。特別なスキルがあるわけではなく、長く勤めていることが評価されていました。

Web系では、実力主義の傾向が強く、スキル次第で年収が大きく変わります。私の同僚は、28歳で年収700万円をもらっていました。高い技術力と、プロダクトへの貢献が評価されていました。

テックリード・リードエンジニア

SIerでは、プロジェクトリーダーやマネージャーになると、年収800〜1000万円が相場です。ただし、マネジメント業務が中心になり、コードを書く時間は減ります。

Web系では、テックリードとして技術的な意思決定を担いつつ、コードも書き続けることができます。年収は800〜1500万円と幅広く、企業規模や役割によって大きく異なります。

管理職(マネージャー以上)

SIerでは、部長クラスで1000〜1500万円、役員クラスで2000万円以上が相場です。ただし、管理職になるには長い年月がかかり、早くても40代です。

Web系では、VPoE(Vice President of Engineering)やCTO候補として、30代で1500〜3000万円というケースもあります。ただし、求められる責任とプレッシャーは非常に大きいです。

ボーナス・評価制度の違い

SIerのボーナス

大手SIerでは、年2回のボーナスが基本給の4〜6ヶ月分支給されます。私がいたSIerでは、夏3ヶ月分、冬3ヶ月分で、合計6ヶ月分が標準でした。業績が悪い年でも、5ヶ月分は保証されていました。

評価は相対評価が多く、同期と比較されます。また、年功序列の要素が強く、若手が突出して評価されることは少ないです。

Web系のボーナス

Web系企業では、企業によって制度が大きく異なります。年俸制で月割り支給の企業もあれば、業績連動のインセンティブがある企業もあります。

私が転職したWeb系企業は、年1回のボーナス(基本給の2〜3ヶ月分)に加えて、個人の成果に応じたインセンティブがありました。良いパフォーマンスを出した年は、インセンティブで100万円以上もらえました。

評価は絶対評価が多く、成果を出せば若手でも高評価を得られます。ただし、成果が出なければ厳しい評価を受けることもあります。

昇給スピードの違い

SIerの昇給

大手SIerでは、毎年5000〜1万円程度の昇給が標準的です。私がいたSIerでは、3年間で年収が100万円ほど上がりました。安定していますが、劇的な変化はありません。

Web系の昇給

Web系では、評価次第で昇給幅が大きく変わります。私がWeb系に転職した初年度は、年収が60万円上がりました。高い成果を出したメンバーは、年収が100万円以上上がることもあります。

ただし、成果が出なければ昇給しないこともあります。実力主義の環境では、常に成果を出し続けるプレッシャーがあります。

福利厚生を含めた総合的な待遇

年収だけでなく、福利厚生も含めて考える必要があります。

SIerの福利厚生

大手SIerは、福利厚生が非常に充実しています。

  • 住宅手当: 月3〜5万円
  • 家族手当: 配偶者1万円、子ども1人あたり5000円
  • 退職金制度: 勤続年数に応じて
  • 社宅・独身寮: 格安で入居可能
  • 各種保険: 団体保険で割安

私がいたSIerでは、住宅手当が月4万円、家族手当が合計1.5万円あり、年間で66万円の手当がありました。これを年収に加算すると、実質的な年収はさらに高くなります。

Web系の福利厚生

Web系企業は、企業によって大きく異なります。メガベンチャーは充実していますが、スタートアップは最低限ということも。

私が転職したWeb系企業では、

  • リモートワーク手当: 月1万円
  • 書籍購入補助: 年間5万円まで
  • 勉強会参加費補助: 年間10万円まで
  • 退職金制度: なし

SIerに比べると金銭的な手当は少ないですが、学習支援が充実していました。技術書を好きなだけ買えたり、カンファレンスに参加できたりするのは、エンジニアとして大きなメリットでした。

働き方比較:ワークライフバランスはどっちが上?

年収と同じくらい重要なのが、働き方です。残業時間、リモートワーク、働き方の自由度を比較します。

残業時間の実態

SIerの残業時間

SIerの残業時間は、プロジェクトのフェーズによって大きく変わります。

平常時は、月20〜30時間程度です。私がいたSIerでは、定時退社できる日も多く、ワークライフバランスは悪くありませんでした。

**繁忙期(リリース前など)**は、月50〜80時間になることもあります。特に、納期直前の1〜2ヶ月は、深夜残業や休日出勤が増えました。私も、リリース前の2ヶ月間は、毎日23時まで働いていました。

炎上プロジェクトになると、月100時間を超えることもあります。私の同期は、炎上案件で半年間、月100時間以上の残業をしていました。ただし、36協定の上限があるため、最近は管理が厳しくなっています。

Web系の残業時間

Web系企業も、企業によって大きく異なります。

メガベンチャーは、月30〜50時間が平均的です。私が転職したWeb系企業では、平均して月35時間程度でした。SIerほどの波はありませんが、新機能リリース前は忙しくなります。

スタートアップは、企業の成長段階によります。創業期は月60時間以上働くことも珍しくありません。私の友人は、スタートアップで毎日22時まで働いていました。

中堅Web企業は、比較的安定しています。私が今いる企業では、月20〜30時間程度で、ワークライフバランスは良好です。

リモートワーク対応

SIerのリモートワーク

コロナ禍以降、大手SIerでもリモートワークが進みましたが、依然として制約があります。

客先常駐案件では、リモートワークが難しいです。クライアント企業のセキュリティポリシーにより、出社が必須のケースが多いです。

社内プロジェクトでは、週2〜3日のハイブリッド型が一般的です。私の元同僚は、週3日出社、週2日リモートというスタイルで働いています。

完全リモートは、まだ少数派です。私がいたSIerでは、完全リモートは管理職の一部だけでした。

Web系のリモートワーク

Web系企業は、リモートワークが進んでいます。

メガベンチャーでは、週2〜3日出社のハイブリッド型が主流です。楽天やサイバーエージェントなど、出社を推奨する企業もあります。

スタートアップ・中堅Web企業では、完全リモート可の企業も増えています。私が今働いている企業は、完全リモート可で、出社は月1回程度です。

リモートワークを重視するなら、Web系企業の方が選択肢は多いです。

働き方の自由度

SIerの働き方

SIerは、クライアントのスケジュールに合わせる必要があるため、自由度は低いです。

勤務時間は、9:00〜18:00が基本で、フレックスタイム制度がある企業も増えていますが、コアタイム(10:00〜15:00)が設定されていることが多いです。

休暇取得は、計画的に取る必要があります。プロジェクトの繁忙期には、休暇を取りにくいこともあります。私も、リリース前の3ヶ月間は、一切休暇を取れませんでした。

副業は、原則禁止の企業が多いです。私がいたSIerでは、副業は完全NGでした。

Web系の働き方

Web系企業は、比較的自由度が高いです。

勤務時間は、フレックスタイム制度(コアタイムなし)やスーパーフレックスの企業も多いです。私の今の職場では、何時に出社しても、何時に退社してもOKです。

休暇取得は、比較的取りやすいです。Slackで「明日休みます」と連絡すれば、基本的にOKです。ただし、チームに迷惑をかけないよう、引き継ぎは必須です。

副業は、許可されている企業が増えています。私も、副業で週末にフリーランス案件を受けています。

転勤・異動の可能性

SIerの転勤・異動

大手SIerでは、全国に支社があるため、転勤の可能性があります。私の同期は、入社3年目で大阪支社に転勤になりました。

また、プロジェクトごとに異動があるため、チームメンバーが頻繁に変わります。私も、2年ごとにプロジェクトが変わり、そのたびに新しいメンバーと働いていました。

Web系の転勤・異動

Web系企業は、基本的に転勤はありません。東京本社のみという企業も多いです。

異動は、希望すれば可能ですが、強制的な異動は少ないです。私の今の職場では、自分が希望すれば別のプロダクトチームに移ることもできます。

キャリアパス比較:将来性があるのはどっち?

エンジニアとして、長期的にどんなキャリアを歩めるかも重要な判断材料です。

技術的なキャリアパス

SIerの技術キャリア

SIerでは、年齢とともに管理職へのキャリアパスが一般的です。

20代: プログラマー、システムエンジニア 30代: プロジェクトリーダー、サブリーダー 40代: プロジェクトマネージャー、部長 50代: 事業部長、役員

技術を極めるよりも、マネジメントスキルが重視されます。私の先輩は、35歳でプロジェクトマネージャーになり、コードを書くことはほとんどなくなりました。

「ずっとコードを書いていたい」という希望は、SIerでは叶いにくいです。

Web系の技術キャリア

Web系企業では、技術を極めるキャリアパスも用意されています。

20代: エンジニア、シニアエンジニア 30代: テックリード、スタッフエンジニア 40代以降: プリンシパルエンジニア、フェロー

技術的な意思決定を担いながら、コードも書き続けられます。私の先輩は、38歳でテックリードとして、年収1200万円をもらいながら、日々コードを書いています。

「技術を極めたい」という希望があるなら、Web系の方が向いています。

マネジメントキャリア

SIerのマネジメント

SIerでは、マネジメント経験を積みやすいです。20代後半でサブリーダー、30代前半でプロジェクトリーダーという流れが一般的です。

私も、27歳でサブリーダーとして、5人のメンバーをマネジメントした経験があります。大規模プロジェクトでのマネジメント経験は、その後のキャリアで大きな武器になりました。

Web系のマネジメント

Web系でも、エンジニアリングマネージャーやVPoEというキャリアがあります。ただし、小規模なチームが多いため、マネジメント経験を積むには時間がかかることもあります。

私が転職したWeb系企業では、30歳でエンジニアリングマネージャーになり、10人のチームをマネジメントしています。Web系のマネジメントは、技術的な判断とピープルマネジメントの両方が求められます。

スキルの汎用性

SIerで身につくスキル

SIerでは、以下のスキルが身につきます。

  • 大規模システムの設計・開発
  • ウォーターフォール開発の経験
  • プロジェクトマネジメント
  • 要件定義・設計書作成
  • クライアントとのコミュニケーション

これらのスキルは、特にBtoB系の企業では評価されます。私がWeb系に転職したとき、「要件定義の経験」は高く評価されました。

ただし、技術スタックが古いことが多く、モダンな開発手法に疎くなるリスクもあります。私も、SIer時代はGitをほとんど使わず、SVNでバージョン管理していました。

Web系で身につくスキル

Web系では、以下のスキルが身につきます。

  • モダンな技術スタック(React、Vue.js、AWS等)
  • アジャイル開発・スクラム
  • CI/CD、DevOps
  • ユーザー志向のプロダクト開発
  • スピード重視の意思決定

これらのスキルは、市場価値が高く、転職市場で有利です。私がWeb系で働き始めてから、LinkedInでのスカウトが3倍に増えました。

ただし、大規模システムの経験が少ないため、エンタープライズ企業への転職では不利になることもあります。

転職市場での評価

SIer出身者の転職

SIer出身者は、以下の企業で評価されます。

  • 大手企業の情報システム部門
  • コンサルティングファーム
  • 他のSIer
  • 一部のWeb系企業(特にBtoB SaaS)

私がWeb系に転職した際、「SIerでの大規模プロジェクト経験」と「クライアント折衝能力」が評価されました。特に、BtoB SaaS企業では、SIerの経験が活きます。

ただし、モダンな技術スタックの経験がないと、Web系への転職は難しいこともあります。私も、転職前に半年間、個人でReactとAWSを学習しました。

Web系出身者の転職

Web系出身者は、以下の企業で評価されます。

  • 他のWeb系企業
  • スタートアップ
  • メガベンチャー
  • 外資系IT企業

モダンな技術スタックを使える人材は、市場価値が高く、転職先の選択肢も広いです。私の同僚は、Web系からGAFAMへの転職に成功しました。

ただし、大手SIerへの転職は、やや難しいこともあります。「Web系は技術に偏りすぎている」と見られることもあるためです。

年齢による市場価値の変化

SIerの場合

SIerでは、年齢とともに市場価値が上がります。特に、30代後半〜40代で、大規模プロジェクトのマネジメント経験があれば、転職市場でも評価されます。

ただし、50代以降は、技術が古くなり、市場価値が下がるリスクもあります。私の元上司は、55歳で希望退職に応じ、その後の転職に苦労していました。

Web系の場合

Web系では、技術力があれば年齢に関係なく評価されます。私の同僚には、45歳でバリバリコードを書いている人もいます。

ただし、技術のキャッチアップを怠ると、すぐに市場価値が下がります。Web系は技術の移り変わりが早いため、常に学び続ける必要があります。

技術スタック比較:身につく技術の違い

エンジニアとして、どんな技術を学べるかは、キャリア形成において非常に重要です。

使用言語・フレームワーク

SIerの技術スタック

SIerでは、エンタープライズ向けの安定した技術が使われます。

  • 言語: Java、C#、COBOL
  • フレームワーク: Spring、.NET Framework
  • データベース: Oracle、SQL Server
  • インフラ: オンプレミス、VMware

私がSIerにいた頃、Javaのバージョンは8で、Springを使った開発が中心でした。安定していますが、最新技術に触れる機会は少なかったです。

Web系の技術スタック

Web系では、モダンでトレンドの技術が使われます。

  • 言語: JavaScript(TypeScript)、Python、Ruby、Go
  • フレームワーク: React、Vue.js、Next.js、Ruby on Rails
  • データベース: MySQL、PostgreSQL、MongoDB
  • インフラ: AWS、GCP、Docker、Kubernetes

私がWeb系に転職してから、ReactとAWSを使った開発が中心になりました。新しい技術に触れる機会が多く、学びが多いです。

開発手法

SIerの開発手法

SIerでは、ウォーターフォール開発が主流です。

  1. 要件定義(1〜3ヶ月)
  2. 基本設計(2〜4ヶ月)
  3. 詳細設計(2〜4ヶ月)
  4. 実装(3〜6ヶ月)
  5. テスト(2〜3ヶ月)
  6. リリース

各フェーズを順番に進め、後戻りが原則ありません。私がSIerで携わったプロジェクトは、要件定義から本番リリースまで2年かかりました。

メリットは、計画的に進められること、クライアントとの合意形成がしやすいことです。 デメリットは、柔軟性が低いこと、後から変更が難しいことです。

私も、実装段階でクライアントから「やっぱり仕様を変更したい」と言われ、スケジュールが大幅に遅れた経験があります。

Web系の開発手法

Web系では、アジャイル開発が主流です。

  • 1〜2週間のスプリント単位で開発
  • 毎日スタンドアップミーティング
  • スプリントレビューで成果を確認
  • レトロスペクティブで改善点を議論

私がWeb系に転職して最も驚いたのは、「2週間で企画→実装→リリース」というスピード感でした。SIerでは2年かかっていたサイクルが、2週間に短縮されたのです。

メリットは、柔軟に方向修正できること、素早くリリースできることです。 デメリットは、計画が立てにくいこと、スコープが曖昧になりやすいことです。

CI/CD・DevOpsの実践度

SIerのCI/CD

SIerでは、CI/CD環境が整っていないことも多いです。私がいたSIerでは、手動でビルドし、手動でデプロイしていました。リリース作業には、10人以上のメンバーが深夜に集まり、手順書を見ながら慎重に作業していました。

最近は、JenkinsやGitLab CIを導入するSIerも増えていますが、完全な自動化には至っていないケースが多いです。

Web系のCI/CD

Web系では、CI/CDが当たり前です。私が働いている企業では、GitHubにpushすると、自動でテストが実行され、mainブランチにマージすると自動でデプロイされます。

リリース作業は、ボタン一つで完了します。1日に何度もリリースすることも珍しくありません。

DevOpsの実践

SIerでは、開発チームと運用チームが分かれていることが多く、DevOpsの実践は難しいです。私がいたSIerでは、開発が終わった後、運用チームに引き渡す形でした。

Web系では、開発チームが運用も担当する「You build it, you run it」の文化が浸透しています。私も、自分が開発した機能の監視やトラブル対応を行っています。

学習機会とスキルアップ

SIerの学習環境

SIerでは、社内研修が充実していることが多いです。私がいたSIerでは、入社時に3ヶ月間の研修があり、Javaの基礎からデータベース、ネットワークまで学びました。

また、資格取得支援もあり、応用情報技術者やOracle Masterの取得費用を会社が負担してくれました。

デメリットは、学べる技術が限定的なこと、最新技術に触れる機会が少ないことです。私も、SIer時代は会社で決められた技術しか学べませんでした。

Web系の学習環境

Web系では、個人の学習意欲が重視されます。社内研修は少ないですが、書籍購入補助やカンファレンス参加費補助が充実しています。

私が働いている企業では、毎月5万円まで技術書を購入でき、年に1回、海外カンファレンスに参加できます。

また、社内勉強会やLT(Lightning Talk)が頻繁に開催され、社員同士で知識を共有する文化があります。私も、月に1回はLTで学んだことを発表しています。

メリットは、最新技術に触れる機会が多いこと、自分で学びたいことを選べることです。 デメリットは、自己学習が前提なこと、学ばない人は取り残されることです。

企業文化・働く環境の違い

技術やキャリアだけでなく、日々働く環境や文化も、満足度に大きく影響します。

意思決定のスピード

SIerの意思決定

SIerでは、意思決定に時間がかかります。クライアントとの合意形成、社内の稟議、複数の承認プロセスを経る必要があります。

私がSIerで「この機能を追加したい」と提案したとき、承認が下りるまでに2ヶ月かかりました。その間に、何度も会議を重ね、資料を作成し、説明を繰り返しました。

メリットは、慎重に判断できること、失敗のリスクが低いことです。 デメリットは、スピード感がないこと、チャンスを逃すことです。

Web系の意思決定

Web系では、意思決定が非常に速いです。朝の会議で「この機能を作ろう」と決まり、午後には実装を開始、翌日にはリリース、ということもあります。

私が「こういう機能があったらいいのでは」と提案したとき、その場で「いいね、やってみよう」と承認され、その週のうちにリリースしました。

メリットは、素早く動けること、チャレンジしやすいことです。 デメリットは、失敗のリスクがあること、慎重さに欠けることもあることです。

チームの雰囲気

SIerのチーム

SIerでは、階層的な組織が一般的です。上司→リーダー→サブリーダー→メンバーという明確な上下関係があります。

私がいたチームでは、プロジェクトマネージャーが絶対的な権限を持ち、メンバーは指示に従う形でした。若手が意見を言う機会は少なく、「言われたことをやる」という雰囲気でした。

メリットは、役割分担が明確なこと、責任の所在がはっきりしていることです。 デメリットは、風通しが悪いこと、主体性を発揮しにくいことです。

Web系のチーム

Web系では、フラットな組織が多いです。役職はあっても、日常的には「さん」付けで呼び合い、誰でも意見を言える雰囲気です。

私が働いているチームでは、新人でもベテランでも対等に意見を交換します。私の提案が採用されることも多く、やりがいを感じています。

メリットは、風通しが良いこと、主体性を発揮できることです。 デメリットは、責任が曖昧になることもあること、自分で判断しないといけないプレッシャーがあることです。

評価基準

SIerの評価

SIerでは、以下が評価されます。

  • プロジェクトの成功(納期厳守、予算内)
  • ミスをしないこと
  • 上司やクライアントとの関係構築
  • 資格取得

私がSIerにいた頃、評価面談で「もっと資格を取ってください」「クライアントとの関係を良好に保ってください」と言われました。技術力よりも、プロジェクトを無難に進めることが重視されていました。

Web系の評価

Web系では、以下が評価されます。

  • プロダクトへの貢献(ユーザー数増加、売上向上)
  • 技術的なチャレンジ
  • チームへの貢献(他のメンバーのサポート、知識共有)
  • 主体性

私が働いている企業では、「何をやったか」よりも「どんな成果を出したか」が重視されます。小さな機能でも、ユーザーに大きな価値を提供できれば、高く評価されます。

服装・オフィス環境

SIerの環境

SIerでは、服装はスーツまたはビジネスカジュアルが基本です。私がいたSIerでは、毎日スーツで出社していました。客先常駐の場合は、必ずスーツです。

オフィスは、整然としたデスク配置で、静かな雰囲気です。私がいたオフィスは、図書館のように静かで、私語は基本的にNGでした。

Web系の環境

Web系では、服装は自由です。私は毎日Tシャツとジーンズで出社しています。スーツを着ている人は、ほとんどいません。

オフィスは、カジュアルで開放的な雰囲気です。フリーアドレスで、好きな席に座れます。カフェスペースがあり、コーヒーを飲みながら仕事をすることもできます。

私の今の職場では、ゲームコーナーもあり、休憩時間に同僚とゲームをすることもあります。

飲み会・社内イベント

SIerの文化

SIerでは、飲み会や社内イベントが多いです。歓送迎会、忘年会、新年会など、年に10回以上の飲み会がありました。

参加は半ば強制的で、断りにくい雰囲気でした。私も、行きたくない飲み会に何度も参加しました。

最近は、こうした文化も変わりつつあり、若手の参加は任意になってきています。

Web系の文化

Web系では、飲み会は任意参加が基本です。私が働いている企業では、四半期に1回程度、懇親会がありますが、参加しなくても問題ありません。

むしろ、オンラインでの交流が中心です。Slackの雑談チャンネルで、趣味の話や技術の話をすることが多いです。

社内イベントは、技術的なものが多いです。ハッカソン、LT大会、勉強会など、技術を学べるイベントが充実しています。

どんな人にSIerが向いているか

ここまでの比較を踏まえて、SIerに向いている人の特徴をまとめます。

安定志向の人

SIer、特に大手は、安定性が高いです。倒産リスクが低く、給与も安定しています。毎年着実に昇給し、ボーナスも確実にもらえます。

私の元同僚は、「家族を養っているから、安定した収入が第一」と話していました。こうした安定志向の人には、SIerが向いています。

大規模プロジェクトに関わりたい人

SIerでは、数十人、数百人規模のプロジェクトに関われます。大手企業の基幹システムなど、社会的インパクトの大きな仕事ができます。

私も、金融機関のシステム開発に関わり、「何百万人もの人が使うシステムを作っている」という実感がありました。

マネジメントキャリアを目指す人

SIerでは、若いうちからマネジメント経験を積めます。プロジェクトリーダー、プロジェクトマネージャーとして、キャリアを積みたい人に向いています。

私も、27歳でサブリーダーを経験し、マネジメントの基礎を学びました。この経験は、今でも役立っています。

計画的に仕事を進めたい人

ウォーターフォール開発は、計画的に進められます。「今日は何をするか」が明確で、予定通りに進めることに喜びを感じる人には、SIerが向いています。

私の元同僚は、「計画通りに進むのが好き」と話していました。こうした性格の人には、SIerの働き方が合っています。

客先常駐に抵抗がない人

SIerでは、客先常駐の案件も多いです。大手企業のオフィスで働くことに興味がある人、色々な企業を見たい人には、向いています。

私も、客先常駐で大手銀行のオフィスで働いた経験があります。普通では入れない企業の内部を見られたのは、貴重な経験でした。

どんな人にWeb系が向いているか

次に、Web系企業に向いている人の特徴をまとめます。

最新技術を学びたい人

Web系では、常に最新技術に触れられます。React、Next.js、TypeScriptなど、トレンドの技術を使って開発できます。

私も、Web系に転職してから、技術力が格段に向上しました。「常に新しいことを学びたい」という人には、Web系が最適です。

スピード感のある環境で働きたい人

Web系では、意思決定が速く、すぐに実行に移せます。「思いついたらすぐ試したい」「素早くリリースしたい」という人に向いています。

私も、SIerの遅さにストレスを感じていたため、Web系のスピード感は非常に心地よいです。

ユーザーに近いプロダクトを作りたい人

Web系では、エンドユーザーの反応を直接感じられます。リリースした機能に対するユーザーのフィードバックを見て、改善を繰り返せます。

私も、自分が作った機能をユーザーが使っているのを見ると、大きなやりがいを感じます。

主体性を持って働きたい人

Web系では、自分で考え、行動することが求められます。「言われたことをやる」のではなく、「自分で課題を見つけて、解決する」ことが評価されます。

私も、「こうした方がいい」と思ったことを、どんどん提案して実行しています。主体性を発揮できる環境が好きな人には、Web系が向いています。

リモートワークを重視する人

Web系企業は、リモートワーク対応が進んでいます。完全リモートで働きたい人、働く場所の自由が欲しい人には、Web系が適しています。

私も、今は完全リモートで働いており、地方に移住することも視野に入れています。

SIerとWeb系、両方の経験を持つことのメリット

私自身、SIerとWeb系の両方を経験して感じるのは、両方の経験があることが、大きな強みになるということです。

キャリアの幅が広がる

SIerとWeb系、両方の経験があると、転職市場での選択肢が広がります。BtoB SaaS企業など、両方の知見が求められる企業で、非常に重宝されます。

私も、転職活動では「SIerとWeb系の両方を知っている」ことが大きなアピールポイントになりました。

多様な視点を持てる

SIerの「慎重さ」とWeb系の「スピード感」、両方の良さを理解できます。状況に応じて、適切なアプローチを選択できるようになります。

私も、「この機能は慎重に作るべき」「この機能は素早くリリースして改善すべき」という判断ができるようになりました。

技術の幅が広がる

SIerで学んだエンタープライズ技術と、Web系で学んだモダン技術、両方を使いこなせます。技術の引き出しが多いほど、様々な課題に対応できます。

私も、JavaとReact、両方を使えることで、バックエンドもフロントエンドも担当できます。

転職のタイミングと戦略

SIerとWeb系、どちらに行くべきかだけでなく、いつ転職すべきかも重要です。

新卒ならSIerから始めるのもあり

新卒であれば、まずSIerで基礎を学ぶのも一つの選択肢です。研修が充実しており、ビジネスマナーやプロジェクトの進め方を学べます。

私も、新卒でSIerに入ったことで、エンジニアとしての基礎を学べました。3〜5年働いてから、Web系に転職するというキャリアパスは、非常に有効です。

20代後半ならWeb系に挑戦

20代後半であれば、Web系に挑戦するのがおすすめです。技術力を磨き、市場価値を高められます。

私も、27歳でWeb系に転職し、技術力が大幅に向上しました。30代で高年収を得られるようになったのは、この時期にWeb系で経験を積んだおかげです。

30代以降はキャリア戦略次第

30代以降は、自分のキャリアをどう描くかによります。マネジメントに進むなら、SIerでも良いでしょう。技術を極めたいなら、Web系が向いています。

私の先輩は、35歳でSIerからWeb系に転職し、テックリードとして活躍しています。年齢に関係なく、挑戦することは可能です。

まとめ:あなたに合った選択を

SIerとWeb系企業、どちらが優れているかではなく、あなたに合っているのはどちらかが重要です。

SIerを選ぶべき人

  • 安定した環境で働きたい
  • 大規模プロジェクトに関わりたい
  • マネジメントキャリアを目指している
  • 計画的に仕事を進めたい
  • 福利厚生を重視する

Web系を選ぶべき人

  • 最新技術を学びたい
  • スピード感のある環境で働きたい
  • ユーザーに近いプロダクトを作りたい
  • 主体性を発揮したい
  • リモートワークを重視する

どちらにも共通する成功のポイント

どちらを選んでも、成功するためには以下が重要です。

継続的な学習: IT業界は変化が早いため、常に学び続ける必要があります。

主体性: 言われたことをやるだけでなく、自分で考えて行動することが大切です。

コミュニケーション: どちらの環境でも、チームでの協働が不可欠です。

長期的な視点: 目先の年収だけでなく、5年後、10年後のキャリアを考えて選択しましょう。

私自身、SIerからWeb系に転職したことで、キャリアが大きく変わりました。あなたも、自分に合った環境を選び、充実したエンジニアライフを送ってください。

この記事が、あなたの意思決定の助けになれば幸いです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました