固定残業代の求人票、どこを見ればいい?
求人票で見るのは3つだけです。①固定残業代を除いた基本給、②何時間分でいくらか、③その時間を超えた分は別に払うと書いてあるか。3つがそろっていれば、実際の時給と、固定残業代が足りているかを計算できます。
このページの要点
- 見るのは基本給・何時間分でいくらか・超えた分の支払いの3つです。
- 基本給を時給に直すと、固定残業代が足りているかを計算できます(例Bは約42,653円足りない)。
- IT系3職種の実際の残業は平均で月11〜12時間。固定30時間はその約2.5〜2.7倍です。
求人票のどこを見ればいい?
「基本給」「何時間分でいくら」「超えた分は別に払う」の3つが書いてあるかを見ます。この3つは、求人票に書くよう国のルール(職業安定法の指針)で求められています。 根拠
- 固定残業代を除いた基本給:月給から固定残業代を引いた額です。時給の計算や、最低賃金との比較はこの額で行います。
- 何時間分でいくらか:「20時間分・40,000円」のように、時間と金額の両方が要ります。時間が無いと、額が足りているか計算できません。
- 超えた分は別に払うこと:決まった時間より多く残業した月は、超えた分の残業代(割増賃金)が別に払われます。

読者の疑問
「みなし残業代」と書かれた求人も、同じように見ればいい?
編集部
「みなし残業代」「みなし残業手当」など、名前が違っても同じ扱いです。 根拠
国の様式では、どの欄に書かれる?
ハローワークに求人を出す会社が書く用紙(求人申込書)には、固定残業代だけの欄があります。基本給に固定残業代が含まれているときも、その分を抜き出してこの欄に書くよう求められています。 根拠

内定の後に受け取る書面(労働条件通知書)では、どこを見る?
厚生労働省のひな形には、「固定残業代」という名前の欄はありません。額と時間が書面のどこにあるかは、賃金の欄と割増賃金率の欄を見比べて探します。見つからなければ、「面接や面談で、どう聞けばいい?」の聞き方で確かめられます。 根拠

良い例と、足りない例(例文)
どれも例文です(実在の会社の求人ではありません)。
- 良い例:3つがそろっている
月給280,000円(基本給240,000円、固定残業手当40,000円/時間外労働20時間分として支給。20時間を超える時間外労働、休日労働、深夜労働の割増賃金は追加で支給)
①②③がすべて書いてあります。
- 足りない例1:内訳が無い
月給280,000円(固定残業代を含む)
足りないもの:①基本給、②何時間分でいくらか、③超えた分の支払い。
- 足りない例2:時間が無い
月給280,000円(基本給240,000円、固定残業代40,000円を含む)
足りないもの:②何時間分か、③超えた分の支払い。
- 足りない例3:金額と基本給が無い
月給280,000円(固定残業代20時間分を含む。超過分は別途支給)
足りないもの:①基本給、②固定残業代の金額。
- 足りない例4:3つはあるが、額が足りない
月給280,000円(基本給240,000円、みなし残業手当40,000円/45時間分。超過分は別途支給)
書き方はそろっていますが、45時間分には約82,653円必要で、40,000円では足りません。計算のしかたは次の節で説明します(表1の例B)。
実際はいくらになる?
基本給を1時間あたりに直すと、実際の時給と、固定残業代が足りているかが分かります。残業1時間の代金は、時給の1.25倍以上です。 根拠
- 1か月の勤務時間を出す(365日-年間休日)×1日の勤務時間÷12
- 基本給を時給に直す基本給÷1か月の勤務時間(固定残業代は含めない)
- 固定の時間分に必要な額を出す時給×1.25×固定残業の時間
- 求人票の固定残業代と比べる求人票の額が、必要な額以上か
- 時給を地域の最低賃金と比べる時給が最低賃金以上か
例の会社(年間休日120日、1日8時間)なら、1か月の勤務時間は約163.3時間です。次の表は、すべて例の数字です。
| 項目 | 例A:問題が見つからない例 | 例B:額が足りない例 | 例C:最低賃金を下回る例 |
|---|---|---|---|
| 求人票の月給 | 300,000円 | 280,000円 | 200,000円 |
| 固定残業代(時間) | 60,000円(30時間分) | 40,000円(45時間分) | 45,000円(30時間分) |
| ① 固定残業代を除いた基本給 | 240,000円 | 240,000円 | 155,000円 |
| ② 時給(1時間あたりの額) | 1,469.4円 | 1,469.4円 | 949.0円 |
| ③ 固定残業の時間分に必要な額(②×1.25×時間) | 55,102円 | 82,653円 | 35,587円 |
| ④ 求人票の固定残業代は③以上か | 以上 | 足りない(約42,653円) | 以上 |
| ⑤ 最低賃金(例:時給1,000円)と比べる | — | — | 下回る(949.0円<1,000円) |
表1:計算例(例の数字)。時給=基本給×12÷((365-120)×8)。円未満は四捨五入して表示
例Bは、3つが書いてあっても、時間に対して額が足りない場合です。45時間残業した月は、約42,653円足りません。 根拠
例Cは、基本給だけで見ると最低賃金を下回る場合です。固定残業代は最低賃金の比較に入れないので、月給200,000円だけ見ても気づけません。 根拠
計算をくわしく知りたい方へ
1か月の勤務時間:会社が決めた勤務時間(所定労働時間)を1か月の平均にします。(1年の日数-年間休日)×1日の勤務時間÷12で出せます。 根拠
時給の計算から除く手当:家族手当、通勤手当、住宅手当などは、残業代の計算のもとに入れません。例では、これらの手当は無いものとしました。 根拠
深夜や休日:夜10時から朝5時までは1.25倍、法定の休日は1.35倍、月60時間を超えた残業は1.5倍以上です。重なる時間は、さらに率が上がります(表4)。 根拠
勤務時間が1日8時間より短い会社:決まった時間を超えても、8時間までは上乗せが付かない時間があり、計算が変わります。
最低賃金:地域と年度で違います。厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」で確かめてください。
固定残業30時間は多いのか?
IT系の3職種の実際の残業は、平均で月11〜12時間です。固定30時間はその約2.5〜2.7倍、固定45時間は約3.8〜4.1倍にあたります。
| 職種(企業規模計) | 実際の残業(平均) | 固定20時間 | 固定30時間 | 固定45時間 |
|---|---|---|---|---|
| システムコンサルタント・設計者 | 11時間 | 1.8倍 | 2.7倍 | 4.1倍 |
| ソフトウェア作成者 | 12時間 | 1.7倍 | 2.5倍 | 3.8倍 |
| その他の情報処理・通信技術者 | 12時間 | 1.7倍 | 2.5倍 | 3.8倍 |
表2:固定残業の時間が、実際の残業(平均)の何倍か(このサイトで計算、小数第2位を四捨五入)。出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」2025年(令和7年) 第1表(e-Stat)。一般労働者、産業計、男女計。取得・照合:2026年10月4日
会社の規模で見ると、1,000人以上のソフトウェア作成者は16時間、10〜99人では6時間と、差があります(表3)。
読者の疑問
固定残業が45時間の求人は、長すぎる?
編集部
固定の時間が長いだけで、問題とは言えません。45時間は、残業の上限の原則(月45時間)と同じ時間です。 根拠
長い求人ほど、実際の残業時間を聞いておく価値があります(次の節の質問4)。
平均の値で、2025年6月の1か月分です。会社や部署によって大きく違います。 根拠
会社の規模ごとの値を見る
| 職種 | 企業規模計(10人以上) | 1,000人以上 | 100~999人 | 10~99人 |
|---|---|---|---|---|
| システムコンサルタント・設計者 | 11時間 | 12時間 | 9時間 | 11時間 |
| ソフトウェア作成者 | 12時間 | 16時間 | 12時間 | 6時間 |
| その他の情報処理・通信技術者 | 12時間 | 14時間 | 11時間 | 10時間 |
表3:1か月の残業時間(超過実労働時間数、2025年6月分の平均)。出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」2025年(令和7年) 第1表(e-Stat)。一般労働者、産業計、男女計。取得・照合:2026年10月4日
面接や面談で、どう聞けばいい?
次の文は、そのまま使えます。答えをメモしておくと、内定後に届く書面(労働条件通知書)と見比べられます。
- 「月給のうち、固定残業代を除いた基本給はいくらですか。」
- 「固定残業代は何時間分で、時間外・休日・深夜のどの分として払われますか。」
- 「固定残業の時間を超えた月は、超えた分をどのように計算して、いつ払われますか。」
- 「配属予定の部署では、直近1年の1か月あたりの残業時間は、平均でどのくらいですか。」
- 「固定残業の時間より残業が少ない月も、固定残業代は同じ額ですか。」
- 「労働条件通知書(または雇用契約書)に、固定残業代の時間と金額、超えた分の支払いが書かれますか。」
よくある疑問
残業が少ない月は、固定残業代は減りますか
固定残業代は、決まった額で払うものです。少ない月の扱いは、会社の契約や決まりによります。質問5で確かめられます。 根拠
決まった時間を超えた分は、払われますか
超えた分の残業代は、法律上、払う必要があります。求人票にも、超えた分を別に払うことを書くよう求められています。裁判でも、払った額が法律の計算より少なくないかが確かめられます。 根拠
固定残業が45時間を超える求人は、どう見ればいいですか
残業の上限は、原則として月45時間です。これを超えられるのは、年6か月までです。固定の時間が長い求人は、多めの残業を前提にしている可能性があるので、実際の残業時間を聞いてください。 根拠
深夜や休日の分も、固定残業代に入っていますか
求人によって違います。上乗せの率も違います(表4)。質問2で確かめられます。 根拠
固定残業代は、最低賃金の計算に入りますか
入りません。固定残業代を除いた基本給を時給に直して、最低賃金と比べます(表1の例C)。 根拠
求人票と、内定後に示された条件が違います
条件を変える場合は、会社がその内容を示すことになっています。何が変わったかを確かめ、労働条件通知書で判断してください。 根拠
困ったときは、どこに相談できますか
厚生労働省の総合労働相談コーナーで相談できます。法律に違反する疑いがあれば、労働基準監督署などにつないでもらえます。場所は厚生労働省の所在地一覧で調べられます。
2つの求人の条件を、並べて比べるには?
固定残業代の額と時間を分けて入れると、月給に占める割合と、想定の残業が固定の時間を超えるかが分かります。使い方は、次の3つの手順です。

手順1求人Aの基本給、固定残業代、その時間数を入れます。

手順2年間休日、1日の勤務時間、想定の残業時間を入れます。求人Bも同じように入れて「比べる」を押します。

手順3年間の総支給額や、労働時間あたりの額が横に並びます。
このページでできないこと
- 個別の求人や契約が、法律に合っているかは判断しません。
- 表と図の額は例の数字です。実際の額は、会社の書面で確かめます。
このページの変更(11件)
- 2026年10月12日広告の箱の見出し「転職支援のサービス」を「公式サイトで確かめる」にそろえた
- 2026年10月11日広告の箱の見出しの「(広告)」と、適合条件チェッカーの結果の広告の箱の「広告」の札を外した。広告であることは、ページの最初の「PR:広告を含みます」で示している
- 2026年10月11日固定残業代と年間休日のページに、そのページでできないことを書いた節を加え、同じことを言っていた注意の箱と、聞き方の節の重なった導入の文を外した。プライバシーの方針の Googleアナリティクスの説明を、Google の公式の説明で確かめられる範囲(送られる情報は見たページの場所やIPアドレスなど、クッキーは利用者と訪問を見分けるためのもの)に直した
- 2026年10月11日各ページの「このページの作り方」の下に、そのページの変更の記録(折りたたみ)を加えた。サービス・求人票の読み方・データ・書類の項目の一覧に、このページの作り方を加えた。データ・書類の項目・失業給付の解説・条件比較の13ページで、2つあった最終確認日を、照合の記録で確かめられる1つの日にした。画面とフッターの最終更新日と、サイトマップの日付を、ページの中身が変わった日にした
- 2026年10月11日広告のボタンの位置を変えた。求人票とデータの10ページは、本文の終わりにまとめていた3件を、答えの節のあと(40%前後と55%前後)に1件ずつと、最下部に1件にした。ギークリーとファミキャリのページは、1件を対象の節のあとへ移した。ファミキャリのボタンの上の行は、対象と業界の実務経験の条件にした。広告の数・順・リンクは変えていない。全ページの構造化データに、初めて公開した日と、中身が変わった日を入れた
- 2026年10月5日道具の画面の写し(例の数字を入れた3つの手順)と、使った箇所を枠で囲んだ厚生労働省の資料の切り出しを加えた。試用期間のページに、厚生年金と雇用保険の節を加えた。休日のページに、2027年の暦での内訳を加えた
- 2026年10月5日ページを作り直した。求人票で見る3つの場所(例文つき)、実際の時給と固定残業代が足りているかの計算(例の数字)、固定残業の時間がIT系3職種の実際の残業(賃金構造基本統計調査2025年)の何倍か、面接での聞き方、よくある疑問を、普通の言葉で先に置いた。法律・指針・最高裁の判決4件(厚生労働省の資料にある通称つき)・出典は、最後の「根拠を確かめたい方へ」に折りたたんで置いた。引用した文はすべて、公開の前に毎回、資料を取得して照合する
- 2026年10月5日広告のあるページの表示を「PR:広告を含みます」に変え、オレンジ色の帯をやめて、「最終確認日・根拠・版・変更の記録」の行の先頭に置いた
- 2026年10月5日afbの広告(ユニゾンキャリア、メイテックネクスト)を加え、求人票・オファーの条件比較、求人票の読み方の4ページ、データの6ページ、適合条件チェッカー(業界未経験を選んだとき)に置いた
- 2026年10月5日転職支援サービスの広告(A8.net)を、比較ページ(ITエンジニア向け、20〜30代向け)と、道具・読み物・データ・ギークリーの事実のページに置いた。広告のあるページの最初に表示を入れ、運営方針・プライバシーの方針・よくある疑問を書き直した
- 2026年10月4日転職サービスの事実(7ページ)、求人票の読み方(5ページ)、データ(4ページ)、ゲーム業界の書類の項目(4ページ)、更新の記録を加えた
サイト全体の変更と、数字・記載の変更は更新の記録にあります。
根拠を確かめたい方へ
本文の「根拠」は、ここにつながっています。法律・指針・判決の文は、公開の前に毎回、資料を取得して機械で照合しています。
求人票に書くこと(職業安定法と2つの指針)
職業安定法は、求人や募集のときにその者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。
と定めています(第5条の3。e-Gov 法令検索:職業安定法)。
職業安定法の指針は、固定残業代を名称のいかんにかかわらず、一定時間分の時間外労働、休日労働及び深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金
と定め、固定残業代を除外した基本給の額、固定残業時間を超える時間外労働、休日労働及び深夜労働分についての割増賃金を追加で支払うこと等を明示すること。
としています。明示の時期は原則として、求職者等と最初に接触する時点までに従事すべき業務の内容等を明示すること。
とされ、賃金について実際の賃金等よりも高額であるかのように表示してはならないこと。
ともしています(厚生労働省 法令等データベース:職業安定法の指針)。
若者雇用促進法(青少年の雇用の促進等に関する法律)の指針(平成二十七年厚生労働省告示第四百六号
)も、固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法、固定残業代を除外した基本給の額、固定残業時間を超える時間外労働、休日労働及び深夜労働分についての割増賃金を追加で支払うことなどを明示すること。
としています(厚生労働省のリーフレット)。
求人のときに示した条件を変える場合について、職業安定法は当該変更する従事すべき業務の内容等その他厚生労働省令で定める事項を明示しなければならない。
と定めています(第5条の3第3項)。
厚生労働省などのリーフレットは、明示する3つを固定残業代を除いた基本給の額
、固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法
、固定残業時間を超える時間外労働、休日労働および深夜労働に対して割増賃金を追加で支払う旨
としています(厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークのリーフレット)。
「みなし労働時間制」は別の制度です。労働基準法第38条の2は、会社の外で働き労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。
としています。働いた時間の数え方の制度で、残業代の払い方ではありません(裁量労働制のページ)。
求人申込書と労働条件通知書の様式
厚生労働省などの「求人申込書の書き方」は、基本給に固定残業代が含まれている場合、その分を抜き出し「固定残業代(c)」に記入してください。
としています。記入例には固定残業代に関する特記事項
の欄もあります(厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「求人申込書の書き方」)。
厚生労働省の労働条件通知書のひな形(一般労働者用;常用、有期雇用型)は、主要様式ダウンロードコーナーで令和8年10月1日以降は、こちらの様式を使用してください。
とされている様式です(厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー」)。賃金の欄には基本賃金
、諸手当の額又は計算方法
、所定時間外、休日又は深夜労働に対して支払われる割増賃金率
の項目があり、働く時間の欄には所定時間外労働の有無
の項目があります(厚生労働省「労働条件通知書」)。「固定残業代」という名前の項目はありません。
働く時間の上限と、残業代の上乗せの率(労働基準法)
労働基準法第32条は、使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。
と定めています。これを超えるには、会社と働く人の代表との書面の協定(36協定)が要り、その限度時間について第36条第4項は前項の限度時間は、一箇月について四十五時間及び一年について三百六十時間
と定めています。厚生労働省は残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間とし、
原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までです。
と説明しています(厚生労働省「時間外労働の上限規制」)。
第37条第1項は、時間外と休日の労働について通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
とし、政令は延長した労働時間の労働については二割五分とし、これらの規定により労働させた休日の労働については三割五分とする。
と定めています。月60時間を超えた分について、同項ただし書は当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
としています。深夜について第37条第4項は使用者が、午後十時から午前五時まで
の間において労働させた場合においては、その時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
と定め、深夜に及んだ時間外労働について、労働基準法施行規則第20条は第十九条第一項各号の金額にその労働時間数を乗じた金額の五割以上(その時間の労働のうち、一箇月について六十時間を超える労働時間の延長に係るものについては、七割五分以上)の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。
としています。
| 働いた時間 | 上乗せの率(最低) | 根拠 |
|---|---|---|
| 時間外労働(1日8時間・週40時間を超えた分) | 2割5分(25%) | 労働基準法第37条第1項、政令 |
| 時間外労働のうち、1か月60時間を超えた分 | 5割(50%) | 労働基準法第37条第1項ただし書 |
| 休日労働(法定の休日) | 3割5分(35%) | 政令 |
| 深夜(午後10時から午前5時まで) | 2割5分(25%) | 労働基準法第37条第4項 |
| 時間外労働が深夜に及んだ時間 | 5割(50%)。月60時間を超えた分は7割5分(75%) | 労働基準法施行規則第20条第1項 |
| 休日労働が深夜に及んだ時間 | 6割(60%) | 労働基準法施行規則第20条第2項 |
表4:割増賃金の率の最低限(通常の1時間あたりの賃金に上乗せする率)。出典:e-Gov 法令検索:労働基準法、e-Gov 法令検索:割増賃金の率の政令、e-Gov 法令検索:労働基準法施行規則
割増賃金の計算のもとについて、第37条第5項は第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。
とし、施行規則第21条はほかに一 別居手当 二 子女教育手当 三 住宅手当 四 臨時に支払われた賃金 五 一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金
を挙げています。1時間あたりの額の出し方について、施行規則第19条は月によつて定められた賃金については、その金額を月における所定労働時間数(月によつて所定労働時間数が異る場合には、一年間における一月平均所定労働時間数)で除した金額
としています。
最低賃金との比べ方
最低賃金法第4条は使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
と定めています(e-Gov 法令検索:最低賃金法)。厚生労働省は、最低賃金と比べる賃金から所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
や精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
を除くとしています(厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」)。月給の場合の比べ方は月給÷1箇月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)
です(厚生労働省「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」)。
裁判例(最高裁判所の判決4件)
次の4件は、裁判所の裁判例検索で日付・事件番号・要旨を確かめた判決です。通称は、厚生労働省の「確かめよう労働条件」の裁判例のページの表記によります(高知県観光事件(H06.06.13最二小判)
など)。要旨はこのサイトの言葉でまとめました。
最高裁判所は、労働者に支払われる基本給や諸手当にあらかじめ含めることにより割増賃金を支払うという方法自体が直ちに同条に反するものではなく
としたうえで、次の考え方を示しています。
- 高知県観光事件:最高裁判所第二小法廷 平成6年6月13日判決(平成3(オ)63)
- タクシー運転手の歩合給について、時間外や深夜に働いても額が増えず、通常の賃金の部分と割増賃金の部分を分けられないときは、歩合給を払っても割増賃金を払ったことにはならないとしました。
時間外及び深夜の労働を行った場合にもその額が増額されることがなく、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないときは、右歩合給の支給によって労働基準法(平成五年法律第七九号による改正前のもの)三七条の規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることはできない。
- テックジャパン事件:最高裁判所第一小法廷 平成24年3月8日判決(平成21(受)1186)
- 月間の総労働時間が180時間を超えた場合に別に払う約束があっても、基本給のどこまでが割増賃金か分けられないときは、180時間以内の時間外労働についても、基本給とは別に割増賃金を払う義務があるとしました。
上記の基本給について,通常の労働時間の賃金に当たる部分と上記の割増賃金に当たる部分とを判別することはできない。
- 日本ケミカル事件:最高裁判所第一小法廷 平成30年7月19日判決(平成29(受)842)
- 定額の手当が時間外労働などの対価と言えるかは、契約書の書き方だけでなく、会社の説明や実際の働き方も合わせて判断するとしました。
雇用契約においてある手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否かは,雇用契約に係る契約書等の記載内容のほか,具体的事案に応じ,使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容,労働者の実際の労働時間等の勤務状況などの事情を考慮して判断すべきである。
(判決の全文) - 国際自動車(第2次上告審)事件:最高裁判所第一小法廷 令和2年3月30日判決(平成30(受)908)
- 残業手当の額をそのまま歩合給から差し引くしくみでは、割増賃金を払ったとは言えないとしました。判決は、払われた額が
割増賃金として支払われた金額が,通常の労働時間の賃金に相当する部分の金額を基礎として,労働基準法37条等に定められた方法により算定した割増賃金の額を下回らないか否かを検討することになる
とし、その前提として通常の労働時間の賃金に当たる部分と同条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要である
と述べています(判決の全文)。
残業時間の統計について
統計の「超過実労働時間数」は、事業所の就業規則などで定められた所定労働日における始業時刻から終業時刻までの時間以外に実際に労働した時間数及び所定休日において実際に労働した時間数をいう。
(厚生労働省「主な用語の説明」)。法律の時間外労働(1日8時間・週40時間を超えた時間)とは範囲が同じではありません。
調査は令和7(2025)年6月分の賃金等
について行われ、集計は10人以上の常用労働者を雇用する民営事業所
が対象です(厚生労働省「調査の概要」)。短時間労働者は含みません。
出典の一覧(URLと確認日)
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」(岐阜労働局掲載のリーフレット)https://jsite.mhlw.go.jp/gifu-roudoukyoku/content/contents/001707276.pdf/確認日:2026年10月3日
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第32条・第36条・第37条・第38条の2e-Gov 法令検索(デジタル庁)/https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049/確認日:2026年10月11日
- 労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(平成6年政令第5号)e-Gov 法令検索(デジタル庁)/https://laws.e-gov.go.jp/law/406CO0000000005/確認日:2026年10月11日
- 労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第19条〜第21条e-Gov 法令検索(デジタル庁)/https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023/確認日:2026年10月11日
- 職業安定法(昭和22年法律第141号)第5条の3e-Gov 法令検索(デジタル庁)/https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000141/確認日:2026年10月11日
- 職業紹介事業者、求人者、労働者の募集を行う者…等がその責務等に関して適切に対処するための指針(平成11年労働省告示第141号)厚生労働省 法令等データベース/https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00005680&dataType=0&pageNo=1/確認日:2026年10月11日
- 厚生労働省「若者雇用促進法に基づく指針を確認してください」(青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主…が適切に対処するための指針のリーフレット)厚生労働省/https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/leaflet-03.pdf/確認日:2026年10月11日
- 最低賃金法(昭和34年法律第137号)第4条e-Gov 法令検索(デジタル庁)/https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000137/確認日:2026年10月11日
- 厚生労働省「最低賃金の対象となる賃金」厚生労働省/https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/chingin/newpage_43898.html/確認日:2026年10月11日
- 厚生労働省「最低賃金額以上かどうかを確認する方法」厚生労働省/https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/chingin/newpage_43899.html/確認日:2026年10月11日
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」厚生労働省/https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran//確認日:2026年10月11日
- 厚生労働省 働き方改革特設サイト「時間外労働の上限規制」厚生労働省/https://hatarakikatakaikaku.mhlw.go.jp/overtime.html/確認日:2026年10月11日
- 最高裁判所第二小法廷 平成6年6月13日判決(平成3(オ)63)裁判所(裁判例検索)/https://www.courts.go.jp/hanrei/62698/detail2/index.html/確認日:2026年10月11日
- 最高裁判所第一小法廷 平成24年3月8日判決(平成21(受)1186)裁判所(裁判例検索)/https://www.courts.go.jp/hanrei/82096/detail2/index.html/確認日:2026年10月11日
- 最高裁判所第一小法廷 平成30年7月19日判決(平成29(受)842)裁判所(裁判例検索)/https://www.courts.go.jp/hanrei/87883/detail2/index.html/確認日:2026年10月11日
- 最高裁判所第一小法廷 平成30年7月19日判決(平成29(受)842)判決の全文裁判所(裁判例検索)/https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-87883.pdf/確認日:2026年10月11日
- 最高裁判所第一小法廷 令和2年3月30日判決(平成30(受)908)裁判所(裁判例検索)/https://www.courts.go.jp/hanrei/89433/detail2/index.html/確認日:2026年10月11日
- 最高裁判所第一小法廷 令和2年3月30日判決(平成30(受)908)判決の全文裁判所(裁判例検索)/https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-89433.pdf/確認日:2026年10月11日
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査で使用されている主な用語の説明」厚生労働省/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/yougo-01.html/確認日:2026年10月11日
- 厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況:調査の概要」厚生労働省/https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2025/gaiyo.html/確認日:2026年10月11日
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」厚生労働省/https://www.mhlw.go.jp/general/seido/chihou/kaiketu/soudan.html/確認日:2026年10月11日
- 厚生労働省「都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧」厚生労働省/https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/shozaiannai/roudoukyoku/index.html/確認日:2026年10月11日
- 厚生労働省「確かめよう労働条件」裁判例(賃金:割増賃金の不払など)厚生労働省/https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/hanrei/chingin/fubarai.html/確認日:2026年10月11日
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「求人申込書の書き方」厚生労働省/https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000579473.pdf/確認日:2026年10月11日
- 厚生労働省「労働条件通知書」(一般労働者用;常用、有期雇用型)厚生労働省/https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001697542.pdf/確認日:2026年10月11日
- 厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)」厚生労働省/https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukijunkankei.html/確認日:2026年10月11日
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」2025年(令和7年) 第1表「職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040421116/取得・照合:2026年10月4日
統計の値は、公開されている表(Excel)の値と照合しています。判決の要旨は、裁判所の公開している要旨と全文をもとに、このサイトの言葉でまとめたものです。